座談会の結果報告 |
第1回座談会:『住宅に何を求めるか 1』〜7月19日(土)17:00より実施
〜資金計画やモデルハウス、モデルル−ムに行く前に考えなければならない事〜
ご参加頂きましたこと、あらためて御礼申し上げます。またお申し込み頂いたにもかかわらず、当事務所のスペ−スの都合上、またの機会にお願い致しました方々、お詫び申し上げます。ご夫婦を含め10名の方々(ご夫婦3組、奥様のみ2名、学生2名)にご参加頂きました。今回の内容について、ご参加頂いた方々から事前に『具体的にどういう意味か』という主旨の問合せがありました。しかしながら、あえて私共の方からはイメ−ジを限定する様な事は前もって申し上げませんでした。ご参加頂く方々は少なからず、住宅造りに問題意識をお持ちになり、試行錯誤しながら模索している方々ばかりです。氾濫する情報の中で具体的に大切な『資金計画』や『間取り』等々の前に、『住宅に真に必要なものは何か』を共に考えていきたいという意味を含め、ご本人達への問いかけとして考える機会を持って頂くことを意図致しました。皆様とのやり取りの抜粋を下記に掲載させて頂きます。掲載の都合上、『問いかけ』に対し私がお答えする形で文章化致しますが、実際は自由に和やかな雰囲気で進行したものを、分かりやすく編集したものです。
(1)『市川市在住のAさんご夫婦(ご主人40才代半ば、奥様30代後半、子供中学生男子1名、小学生女子1名)』の場合
現在3LDKのマンション住まいであり、子供の成長に伴い、約1年半位前から住宅造りを検討している。マンション購入時は夫婦二人であり、通勤に便利という点が購入の決めてであった。現在は手狭になったこともあるが、どうせ造るのであればこだわりを持った住宅を造りたいと考えている。1年半の期間、住宅展示場や建売り等を見まくったが、今一ピンとくるものがない。一度、近所の建築設計事務所も訪ね、提案を受けたがあまり納得のいくものではなかった。果たして今後どのように進めるべきか、再考中である。
<日高意見>
『住宅に何を求めるのか』をもっと明確にする必要があると思います。「手狭になったマンションだから、住宅を建てる」ということは、一見住宅造りの理由として成立っているように思われがちですが、全てとは申しませんが、理由としては決定的なものとは言えないでしょう。なぜなら、本当に『手狭』かどうかの検証がされていないからです。思いきっッたリフォ−ムと荷物の整理で、もしかしたら、『手狭』と思っていたスペ−スが、意外と広くなり使いやすくなる可能性もあります。その方が、新築するよりも事実上費用が掛かりませんし、馴染んだ地域から移動しなくて良くなるかもしれません。仮に『手狭』という理由のみで住宅造りをしたとすると、よほど広い敷地に予算も関係なく、大きな住宅を造らない限り、また、『手狭』という感覚が出てきます。思い起こして下さい。新築マンションへ引っ越した時、広々とした感覚が合ったと思います。我々の感覚は時と共に移変り、当初広いと感じていたものが長年の荷物の蓄積を改善しょうともせず、狭いと感じてしまう感覚、これ程、あてにならないものはないのです。実はもっと根源的なところで『どんな空間に身を置きたいのか』、『その空間で何をしたいのか』、というはっきりとしたイメ−ジが住宅造りには必要になります。それは断片的なイメ−ジでも構わないと思います。例えば、『小さな土地でもみんなでバ−ベキュ−パ−ティをしたい』、『リビングでごろっとすると天井に夜空が見える』、『6M位の吹抜けが欲しい』、『全ての部屋に太陽の明かりが欲しい』等々。荒唐無稽でも何でもいいから、ご家族でどんどんと話し合ってみると、段々と相互にイメ−ジが膨らみ、『こんな感じ』というものが見えてきます。その『こんな感じ』というものがとても大切で、これがすべての『原点〜原風景』になり、我々建築家との『共通言語』となります。近所の建築設計事務所の力量がなかったのではなく、おそらく、お互いに『共通言語』を共有することが出来なかったことが原因であると思われます。情報過多の社会において、発想の原点を内側に置き、ご家族皆でどんな空間に住みたいか、どんな夢を持っているか、どんな人生を送りたいか、真剣に又、楽しく話し合ってみる事が、重要な事と思われます。同時にその『夢のある空間』を維持する為には、その空間を維持する為の『ル−ル』が絶対必要条件となることも心に留めておいて頂きたいと考えます。又ご家族との話し合いは、別の意味においても家族としての『財産』になると確信しております。
(2)東京江戸川区在住のBさんご夫婦(ご主人奥様共に30代半ば、子供未修学児女子1名)の場合
現在2LDKの賃貸マンションに住んでおり、1年位前から住宅取得を検討中。住宅取得の経験は初めてであり、しかしながら絶対に失敗や後悔はしたくない。近所でも最近大規模開発等におけるマンション群が売り出されたり、最近のテレビでもデザイン性豊かな、格好の良い住宅の特集等がされており、マンションにするか、実家横の敷地に注文住宅を建てるか、迷っているところである。マンションの利点や注文住宅の利点などを整理をし、住宅取得の参考にしたい。
<日高意見>
『御自身の価値観を明確にする事』が必要です。ホ−ムペ−ジ上でも書かせて頂いておりますが、先ず明確な用語の定義を致しますと、お話になっている『マンション』とは、企業であるデベロッパ−等が造る『既製品住宅』であり、『建売り住宅』やオ−ダ−的『レディメイド』である『ハウスメ−カ−』住宅はそれに属するとも言えます。我々建築家という立場の者が設計から始める注文住宅は、企業等の思惑に左右されず、まるで『白いキャンパスに絵を描く』かのごとく完全な『オ−ダ−メイド』であり、『既製品住宅』とは全く『質』が違うものと言えます。当事務所も『マンション』の企画やデザインに携わる事が多々ありますが、やはり『エンドユ−ザ−』へ向けての『既製品住宅』を建築的に魅力あるものへするべく範疇であり、『既製品住宅』の域であります。双方社会的認識としては、歴然として存在する住宅産業の2大柱であり、どちらが良いかはまさに住まい手の価値観によるものとなります。先ずは双方の特色をよく理解することから始める必要があり、迷いが払拭されるまで徹底的に調査検討される事をお勧め致します。特色として端的に申し上げられるものとしては、『マンション』の場合は、『住戸空間をモデルル−ム等で確認出来る』、『設備面を含め機能性が高い』、『共用部分が充実している』、『環境が優れている』、『あらかじめある程度仕様が決定されている為、エンドユ−ザ−に「もの造り」等に費やす時間的負担と労力が少ない』等々があり、建築家等による設計から始める注文住宅としては、『1品ものとしてのオリジナル性が高い』、『空間的な独創性が高い』、『空間としてのスト−リ−性がある』、『設計から施工までの流れの中で常に施主として携れることが出来、もの造りを実感出来る』、『機能のみの追求に終わらない』等々があげられます。前者と比べると、後者の方が当然施主としてのそれなりの時間と労力が要求されます。いずれにしても御自身の価値観に合うことが絶対必要条件でありますので、それぞれの特色を理解した上で、いろいろな物件を見たり、いろいろな建築設計事務所の仕事をご覧になったりしながら、総合的に判断されることをお勧め致します。幸いに、当事務所同様、ホ−ムペ−ジを開設しているデベロッパ−や建築設計事務所も多数ありますので、単なる物件の紹介だけでなく仕事の取組み方や住宅に対する考え方等確認出来ますので、ご覧になってみることをお勧め致します。
(3)『浦安市在住のCさんご夫婦(ご主人40代後半、奥様40代前半、子供高校生男子1名、中学生女子1名、75才のお年寄り1名)』の場合
約20年前に某大手デベロッパ−の大規模開発における建売り住宅(4LDK/1階:LDK+和室6帖+洗面所+浴室+トイレ/2階個室3部屋+トイレ)を購入し、現在に至る。現在75才のお年寄りを入れて5人家族であるが、大分足腰が弱ってきており、将来に対する対応を考える時期に来ている。過去にリフォ−ム会社などから提案を受けた事もあったが、リビングが殆どお年寄りのスペ−スとなってしまい、介護中心の間取りの提案であったことから、みあわせた。リフォ−ムの良さも分かるが、限界を感じているし、リフォ−ムで高額を使うのならば建て替えも視野に入れて検討したい。お年寄りの将来に対する対応を踏まえつつ、我々としても快適で豊かな空間が出来ないものか考え中である。
<日高意見>
ご苦労の心中、お察し致します。今や全国的に日本が抱える顕著な高齢化問題と言えます。約20年前は高度成長期であり、住宅と言えば『建売り住宅』が当たり前であり、間取りもいわゆる『金太郎飴』のごとく『○LDK』といったものが殆どで『核家族』を想定している住宅ばかりでありました。これらの住宅は、両親と子供が2〜3人という想定であり、20年後にお年寄りの介護をする事等、夢にも想定していなかったと想像されます。ここに近年における供給する事のみに翻弄した住宅産業の功罪があります。私は、住宅は本来ライフスタイルの変化を受容出来る機能を持ち合わせなければならないと考えております。提案があったリフォ−ム会社としても、もともとライフスタイルの変化を受容出来る機能を持ち合せていない住宅をリフォ−ムしても、『介護』中心に造り変えるしか方法が見当たらなかったのか、又は『介護』というキ−ワ−ドのみによる提案しか持合わせなかったのかのどちらかと推測されます。『廊下に手摺をつける』とか『トイレに車椅子で入れるようにする』等々のハ−ドの部分については議論するまでもない事ですが、今最も必要な事は、ハ−ド以前のソフトの部分、つまり、『リフォ−ム』にしろ『建て替え』にしろ『介護』というキ−ワ−ドのみで空間の組立てをしないことを原則にすることであり、これは逆に聞こえるかも知れませんが、『介護』というライフサイクルを特別なものでなく、その住宅に住む人間の一生涯の中に当たり前のように組入れるということであります。一見『介護』等考えてないプランや空間構成に見えても、ちょっと手を加える事で『介護』対応の構成に変化する、それが『変化を受容する』事であり、そこまで将来を見据えた提案が出来るかどうかが、優秀なリフォ−ム会社か、施主の立場に立つ建築家であるかの目安になります。『変化を受容する』ということは、失礼かも知れませんが、現実問題として『介護』が必要なくなる時期にも同時に対応出来るという意味を含みます。今回の状況の中で更に重要な事は、先ずは『豊かな空間』をどう造るかが第一に優先され、そこに『介護』というキ−ワ−ドをどう組込んでいくかという計画の進め方、順序を今一度見直す事、そしてその考え方をもって『何をどう進めるか』という計画全体を見直して見てはいかがでしょうか。お年寄りだって、『介護』があろうがなかろうが豊かな空間に身をおきたいと思っていらっしゃるはずです。人生の終盤に『私の為にリフォ−ムや建て替えをさせて申し訳ない』という思いを、『介護』を受けるお年寄りご本人にさせない為にも、今一度、計画の進め方、順序の組立ての再考をお勧め致します。
<座談会後記>
貴重なお時間とご意見有難うございました。予定の時間を大幅に過ぎてもいつまでも話はつきない感じでした。いろいろな状況下の中で、考え、悩み、試行錯誤なさっている様子が、皆さんの真剣な眼差しや口調から、伝わってきました。他にもいろいろな話がございましたが、特に議論が白熱したものをご本人達の了解を得て、掲載させて頂きました。特に最後の『介護』の問題は、私自身が81才の母と住む一当事者として考えさせられる事が多々あり、大変勉強になりました。皆さんとお話をしながら気がついた事ですが、業界全体としてこのような機会があまりにも少なすぎると思いました。業界の一員として反省すべき事と痛感しております。皆さんとまたお話する事を約束して、終電近くに帰路につきました。
座談会の内容について御意見、ご感想等ございましたら下記にてご連絡下さい。次回座談会へ反映させて頂きます。
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