●●●●● 虜になったものたちへ ●●●●●

 何を見て「美しい」と感じるかは、人それぞれです。
あるものを目にしたときに、私が「美しいわあ」と溜息をついても、ある人は何の興味も示さない、というこもあります。
 私を引きつけた魅力あるものたち、それらに対して抱いている気持ちを何かに残しておきたくて、書き始めました。

 私が「美しい」と感じたものを画像で紹介したいのはやまやまなのですが、著作権の問題もありますし、なんといってもこのページの表示時間がかかってしまうため、画像はあえて使用していません。
そのかわり、といっては失礼ですが、その商品に関連したホームページがある場合には、文中の言葉にリンクを張ってあります。
興味をもたれた方は、リンクをたどってみてください。




その1  エルメスのスカーフ
 私はあるテレビ番組を見るまでは、エルメスのスカーフになど興味がなかった。でも、そのテレビ番組を見て以来、気に入った図柄があったときには、迷わずに購入しようと思うようになった。
 その番組は、1年だか2年ほど前にNHKで放映されたエルメスのスカーフができるまでのルポルタージュだ。シーズン毎にテーマが決められ、それに沿ったデザイン画が用意され、何万色何十万色とある色から、デザイン画に色を指定していく。エルメスの社長自らが色指定の会議に加わるという。
 その後いくつかの工程を経て、プリント作業。上質のシルクに1色ずつ印刷していくのだ。デザインに使われている色の数だけ版木があるということだろう。多色刷りの版画と同じ手法だ。印刷や出版に携わったことのある人なら誰でも経験があると思うが、2色、4色刷りの場合でさえ、判ずれといって、本来重なるはずのない柄が1〜2mmほど重なったり、柄と柄の間があきすぎて印刷されてしまうといったようなことが往々にしておこる。
 スカーフの場合、印刷する媒体が布だから、余計に判ずれが起きやすいと思うのだが、経験と研究を積み重ねたことで、プリント時の判ずれを最小に押さえる技術が培われ、判ずれはほとんどないそうだ。
 雑誌編集部にいたことのある私には、スカーフが印刷と同様の過程を経て作られている!ということ自体が驚きだったが、それ以上に、多色刷りでありながらほとんど判ずれが起きない!!ということはもうマジックとしか思えなかった。(ちょっとおおげさ?)
 そうやってようやく印刷を終えたスカーフは、さらにオリジナルのデザイン画と見比べられ、色、判ずれ、布目のつれなどに関する何十という項目で厳重なチェックを受ける。1点でも欠点が上げられれば、そこでふるい落とされるという過酷な運命をたどるスカーフもある。このような厳しい過程から生まれる製品だけを扱っているからこそ、世界の中でも一流と言われるエルメスのブランド力を維持できるのだろう。
 日本で手に入れる場合、プロパーで約40000円もするわけだが、スカーフというよりも、版画だと思えばかなりリーズナブルなお買いものと思える。
おまけ   ラッティ(Ratti-France)は、フランスでも超一流の名を欲しいままにするプリントメーカーといわれています。オフィシャルのホームページもあり、スカーフの販売もしています。もしかしたら、エルメスやその他のブランドのスカーフの多くもここでプリントされているのかもしれませんね。
 で、ここでプリンとされたハンカチを手に入れる機会が訪れることになりました。
エルメスのスカーフ同様多色刷りの要領でプリントされたハンカチは、一枚2000円なり。ハンカチではなく、版画と思って、1枚いかがですか?
 →  1998/10/1〜10/30 フランスグッズフェア at 東急Bunkamura(in Bunkamura Shop)



その2 大倉陶園のブルーローズ(岡染ばら・絵柄番号8011)
 ブルーローズ。そう青いバラ、これだけバイオの研究がさかんな現代に於いてもいまだに実現不可能な花です。どうして、青いバラにこれだけ注目が集まっているかといえば、青い花はなくはないのですが、脇役となる小さめの小花ばかり。主役となる花、例えばゆり、カラー、そしてバラなどには、青いものはないのです。主役級の花に青いものが登場すれば、それだけで世間の話題のさらうことになり、それに乗じて売り上げも伸びると睨んでいるのが開発者達に資金を投入している企業の思惑。さらに、バラには本来青い色を作り出す酵素が含まれていないため、余計に研究者達の情熱に拍車をかけているようです。
 とまあ、以上は以前青いバラについてサントリーの広報部の方からいただいた資料を読んだり、懇意にしている花屋さんから聞いた話をまとめたものです。
    で、現実には拝むことのできない青いバラだこそ私は青いバラのついたものには目がないのでしょう。その代表が大倉陶園の群青色のバラが描かれているモーニングカップ。青の濃淡だけで描かれたぽってりとした青いバラ。それと対照的な生地の白さ。一目見ただけでうっとりとしてしまう気品があるのです。
 私はこの絵はてっきり手書きだと思っていたのですが、プリントだということがわかり、少々残念に思っています。葉の部分を見るとわかるのですが、葉脈など細かい部分が描き混まれていないのです。大倉陶園の手書きの青いバラの食器は、ブルーローズ(岡染ばら・絵柄番号8011)というシリーズ。岡染めとは、「本焼きした白生地に油で溶いたコバルト質絵の具で絵を描き、再度高温で焼成し、釉の中にとけこませる」(大倉陶園パンフレットより)技法のことだそうで、読んでいるだけでも、なんとも手間のかかる作業ではありませんか。プリントのバラと比べると、どたらかというと硬い感じのするバラの絵ですが、葉脈まで描きこまれた絵は味わい深いものがあります。構図も食器のデザインは少し古めかしい感じがします。
 染め付け自体にも手間がかかっているのですが、大倉陶園のもっとすごいところは生地の白さです。この白さを出すために使用しているカオリンという石の粉。カオリンは、おしろいなどにも使われている白い石で、この石の粉を焼き物の生地に練り混むことで焼き物の白さやキメの細かさを出すのだそうです。カオリンの産出国は韓国がトップ。韓国の女性の肌が白くキメが細かいのもうなずけますよね。年々産出量が減ってきているこのカオリンを、世界中のどんな陶磁器のメーカーよりも多く使用しているのが大倉陶園なのだそうです。シリーズに関係なく、生地は同一のものを使用しているので、持っている人は一度他のブランド食器とその白さを比べてみてください。その白さと生地のなめらかさは、一目瞭然のはず。
 この生地あってのブルーローズといえそうです。
おまけ   デコラティブな食器も嫌いではないけれど、白無地やブルーの染め付けの食器は食べ物の邪魔にならないので、食器としても扱いやすいように感じます。
大倉陶園の食器は、ブルーローズシリーズ以外にもどれもすばらしいものばかり。使われている生地の品質や染め付け、絵付けの技術の高さもさることながら、マッチングといってお皿やティーカップ1つからでも破損補充を受け付けたり(色味を合わせるため、1、2か月ほどかかるらしい)、贈り物用などにイニシャル加工のサービス(有料。1文字1500円ほど)があるのがうれしい。
 伊勢丹・新宿店の大倉陶園を扱っているコーナーでは、大倉陶園やノリタケの商品について詳しく丁寧に説明してくれる店員さんがいます。(少しお年を召した女性です)私は彼女の薦めでピンクのモーニングカップからスタートしました。
 今年のクリスマスにはマロン色のモーニングカップを夫にプレゼントしようかと考えています。このマロン色は、赤い釉薬に金を混ぜて色に深みを出してあるのだそうです。金色を使っているということで材料費プラス手間賃分少し高めになっているのです。値段が高いなと思ったら、どうしてそういった価格になったのか販売員に尋ねたり、ブランドの広報に問い合わせたり、雑誌や本を読んで情報を入手してみるのも、ものを買うときの楽しみ。高い値段のわけを知れば、素直に納得できることもあります。



その3  nafe社の積み木
 昨年あたりから、赤ちゃんや子どものおもちゃや食器に使われているプラスティックから人間の体にとってよくない物質が溶け出す危険があるというこがクローズアップされています。このため、瀬戸物の食器や木のおもちゃなどが売れていると聞きます。わざわざおまけのおもちゃを木製のものに替えたお菓子メーカーもありましたっけ。
 わが家では、環境ホルモンが大きく取りだたされる以前からプラスティック製のおもちゃをほとんど買ったことがありません。これは、長女が生後3か月から通うことになった保育園の園長先生の影響によるものです。
 「なんでも口に入れて舌の感触から外部との関わりを持ち始める赤ちゃんには、口の中に入れても安全なものだけをおもちゃとして与えるようにしたい。そのためには、体に害のあるプラスティックでできているおもちゃよりは、木でできているものを。そして同じ木でできていても表面に使用している塗料が口に入れてしまっても安全な塗料であること。そしてまた、赤ちゃんの能の発達を促すようなおもちゃを園では使うように心がけています」というお話を聞いて、生まれてはじめて子どもを産んで親の言うことは素直に聞けない、かといって手本にすべきものすら持っていなかった私は、「これだ!」と本能的に自分の信頼すべきものに出逢ったことを直感しました。言われてみればしごく当然に納得できることでも、それを言ってくれる人、言われるタイミングや場所、雰囲気によって受け止め方が変わるのですから、人間って、つくづくあまのじゃくな生き物です。
 そうして、その保育園で出会い、私たち夫婦が虜になったのが、アトリエ・ニキティキで販売されているスイスのネフ社のおもちゃ。「リングリィリング」、「ドリオ」にはじまり、体の形を自由に変えられる青虫の「ジュバ」、ひも通し動物......毎年巡ってくる誕生日、雛祭り、こどもの日、クリスマス、そして下の子どもたちの出産祝いには、夫と私それぞれの実家に預けてあるアトリエ・ニキティキ(主にヨーロッパのおもちゃを輸入・販売している会社)のカタログから商品をリクエストしてプレゼントしてもらうのが習慣となっているくらいです。
 数あるネフ社のおもちゃの中でも秀逸なのが、積み木。積み木というと、普通は三角や四角い形を思い浮かべますが、ネフ社の積み木はかなり違います。組み立てると正立方体やダイアモンド型になるのに、バラバラにすると一瞬どうしたら元の形になるのか頭をひねる形の組み合わせで構成されている「キュービックス」や「ダイモンド」、円柱とその円柱をくり貫いた正立方体の積み木「リグノ」、ドイツのバウハウスデザインを取り入れた曲線が美しい「バウスピール」、モンドリアンの絵を彷彿とさせる「モデュロン」など。どれも皆壊す前の形も美しいけれど、一つ一つのパーツの形がこれまたユニークかつ美しく、とても 30年以上も前にデザインされたものとは思えません。完成されたものだけが持つ普遍的で洗練された造形美とでもいうのでしょうか。
 しかも、これらの積み木のスゴイところは、子どもたちの想像力までかきたてるところ。デザイン的に優れているとは思うものの、奇抜な形のパーツを前にして、私は「はてさて、これで何を作ろうかしら?」と悩んでしまうのですが、昨年のクリスマスに「キュービックス」をプレゼントされた娘達は、親のそんな貧困な想像力などぶっとばしてしまうくらいにこの積み木を使って次々と新しいものを組立始めました。近代建築家も真っ青になるであろう家々、公園、椅子とテーブル、花瓶、トイレ、数々の乗り物などなど。またある時は、ぬいぐるみの食事にもなる、という具合に。一つ一つのパーツが手のひらサイズで扱いやすくもあるのでしょうが、とにかくこの積み木でじっくり・とっくりと遊びます。おもちゃの持つ無限性と子どもの想像力の相乗効果に乾杯、といったところです。
 先日友人から「引越の準備があるから、ニキティキの積み木をもらって」と言われ、なんとわが家のネフ社のコレクションに「ダイモンド」が仲間入り!ラッキー!
おまけ   アトリエ・ニキティキで扱っているヨーロッパのおもちゃは、どれもおすすめですが、too expesive!
園長先生は「一生モノですから、ちょっとがんばって買ってみては?」とおっしゃいましたが、それにしても高い!!それにおもちゃが一生モノかどうかは、悩むところです。 
 ただ、子どものおもちゃは知らず知らずのうちに増殖するもの。(兄弟がいれば、「増えていく」なんていう生やさしい表現では表しきれない!) できるかぎりおもちゃを増やさないためには、幾通りにも遊べるおもちゃは重宝します。
 チューリッヒの更生施設で作られているという組立式の4人乗りのメリーゴーランドのおもちゃは、メリーゴーランドを組み立てる楽しみの中で、馬や人の向きが4体とも同じ方向を向いて組み立てるという幼児にとって高度な経験と知識をためすことにもなり、馬だけまたは人だけを集めておままごとや競争をすることもできれば、馬も人もはずして十字のバーをクルッとルーレットのようにまわして遊ぶこともできます。青・緑・オレンジ・黄色・赤のコップが揃っている「重ねコップ」は、重ねコップとしても遊べるだけでなく、おままごとの際にはコップやお風呂にも早変わり、ひっくり返してイスやケーキにも変身、と大活躍。お話を作ったり神経衰弱をするときに便利な「キーナーメモリーカード」。“高いもの=いいもの”とは限りませんが、普段めったなことではおもちゃを買い与えることのないわが家は、娘達の発達や興味に合わせて少しずつアトリエ・ニキティキのおもちゃを揃えています。
 アトリエ・ニキティキでは、クリスマスシーズンやこどもの日に10%オフセールを行います。この時、ハンパモノや売れ残り品などが50%オフもしくはそれ以下になります。セールのお知らせは「SHOP」のページでお知らせしますので、12月と5月にはチェックしてみてください。



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