頑固親父

僕らが子供の頃には
町内にがんこじじい≠ニ呼ばれる
明治生まれの気骨ある爺さんが居た

「オキヤのオヤジは恐いぞ!」
「おれもこないだ怒られたぞ」

もちろん叱られる原因は
僕らにあったのだろうが
その店で買い物をする時は
僕らは僕らなりに
そのがんこじじい≠フ機嫌を損ねないよう気を遣いながら
覚悟を決めて店に出向いたものだ

「おるおる」
「おれらー、この前お釣りが間違えちょったけんど、よー言わんかったぞ」
「わー、こっち見ゆーぞ!」

取り立てて用もないのに
恐いもの見たさ
その頑固親父と視線が合ったら走って逃げることが
一時僕らのトレンディーとなった

今はもう
その爺さんがどうなっているのか
消息も知らないが
いつの日か僕も
『昭和生まれの頑固親父』
と呼ばれるような
気骨ある人生を送ってみたい