日本消化器集団検診学会雑誌 41巻、2003年3号(160)5月発行、276-283頁


[原著]

 「精度の向上をめざし、採便前に快便促進食を加えた新しい大腸がん検診の試み」

   藤田 昌英、阪本 康夫

   阪本胃腸・外科クリニック 大腸がん検診治療研究所


(要旨)

 大腸がん検診での精度管理上の盲点、即ち、腸内での便滞留中に起こるヘモグロビンの変性による感度低下を防ぐため。採便前に快便促進食を摂取し、得られたより新鮮な便を検査する新しい検診法を試みた。快便促進食とは独自に考案した食物繊維とオリゴ糖の混合顆粒であるが、顆粒服用の受容性は良好であり、服用により排便がスムーズになった割合も高かった。便潜血陽性率は塗布紙で2日採便しマグストリームHem Sp法で検査した従来の3市では6.5%以上であったが、快便促進食を加えた新法の1町では5.4%と低く、特異度向上の傾向が窺われた。初年度の受診者2,533名からの発見大腸がん5名(0.20%)、うち早期が3名、2日とも便潜血強陽性で発見された進行がんの1名は、前年度は従来法にて陰性の偽陰性症例であった。この新しい検診法は快便促進食による検診の感度、特異度がともに向上する傾向が窺われ、さらに大集団で評価する価値があると考える。


(説明と図)

1,腸内での便滞留中に生じるヘモグロビンの変性劣化による感度低下を少なくするため、採便前に快便促進食を摂取してもらい、得られたより新鮮な便を検査する新しい大腸がん検診法を試みた。

 

2,快便促進食とは独自に考案した安全な食物繊維ビートファイバーと天然オリゴ糖ラフィノースの混合顆粒であるが、検診受診者における顆粒服用の受容性は良好であり、服用により排便がスムーズになった割合も高かった。

3,便潜血陽性率は塗布紙で2日採便しマグストリームHem Sp法で検査した従来の3市では6.5%であったのに対し、快便促進食を加えた新しい検診法を採用した1町では5.4%と低く、特異度向上の傾向が窺われた。

4,新しい検診法による初年度の受診者2,533名からの発見大腸癌は5名(0.20%)うち早期が3名と多かった。進行がんの一名は2日とも便潜血強陽性で発見されたが、前年度は従来法にて陰性であった偽陰性症例であり、もう一例は1日のみ弱陽性で発見された上行結腸の小さなmp癌であった。

5,いまだ少数例での検討であるが、この新しい検診法は快便促進により検診の感度向上とともに、特異度も向上する傾向が窺われ、さらに大集団に適用し評価する価値があると考えられる。