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第1回目 モントゥーのチャイコフスキー:交響曲第5番

☆名指揮者モントゥーはチャイコフスキーの交響曲の中でもこの第5番をよく演奏していたがCDでは実に4種類もの演奏を聴くことができる。


58/01/08 ボストンSO(I:13'25",II:12'13",III:6'01",IV:12'00")
RCA(BMG) BVCY-8030-44

58/05/08(L) フランス国立放送局O(I:13'52",II:12'02",III:5'52",IV:12'48")
輸入盤Disques Montaigne TCE-8740

63/05/31(L) ロンドンSO(I:13'45",II:12'23",III:5'53",IV:12'29")
K-Vangard KICC73-4

64/02 北ドイツ放送O(I:13'17",II:11'35",III:6'00",IV:11'52")
C-DENON COCO-9435


一般にモントゥーの「同曲異演」はステレオ期に入っても数多く、(このコーナーでまた取り上げることがあるかもしれない)小生もできる限り収集したつもりであるが、小生の確認した限りでは演奏上の差異はそれ程見られない。このチャイコの5番でもやはりそうで、タイムを比べて見ても驚いたことに各楽章とも1分と差がないのである!いかに彼の演奏が確立された完成品であったかがよくわかる。

1はミュンシュ時代のボストンSOのならではのアンサンブル -やわらかい管楽器、丸いティンパニなど- がよく響いている。スタジオ録音であるので音のバランスがとてもよい。多少劣化した音質であるがとても聴きやすく、ストレートな表現とあいまって、さわやかな印象が強い。

2.はモノラルながら生々しい音で、音色はとても明るい感じを受けるが、聴き始めは基本的にはボストン盤と変わらない印象を受ける。それでも徐々に演奏は臨場感を持ち、終楽章はホットなものになっていく。テンポもやや動くが、モントゥーはいつも冷静沈着である。

3.は最近になって発見されたウィーン音楽祭でのライブであるが、2.に比べると随分安定しているという印象を受ける。これも手兵との演奏ということもあるのであろう。

4.はモントゥーが最晩年の北ドイツSOとのもの。このオケとはLPで7枚ものスタジオ録音がある。いかに彼のこのオケへの気に入りようがわかるが、おそらく彼の最後のレコーディングの1つである。上の3枚の演奏と比べてみても、まずそのオケの響きがとてもコクのあるものになっている。全体の仕上げはとても滑らかで、このオケの技術力というものは「ハフナー」などを聴いた時は技術力はそれ程高いものではないと思われたが、この録音ではさほどは感じられない。比較的おとなしい演奏なのかもしれないが、オケの地味な響きからくるものだろう。しかしこのまろやかな響きはとても当時の常任のイッセルシュテットなどとの、重厚というものとは別のもののようである。


このオケのとの小生はLP時代に1を本当によく聴いた。この曲はこの演奏が入門であったのである。入門時の演奏というものは大抵の場合、「バイブル」になってしまうことが多い。小生も1は購入しなおしたりして、馴染みすぎてしまったというところであるが、今改めて聞き直してみても、この演奏も持つ説得力は変わらない。しかしやはり基本的には4種類とも変わらないものがあり、どれを取ってもそれなりの満足が得られることは間違いない。



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