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第10回目 カラヤンのシューマン・交響曲第4番

☆ついに自己満足の「同曲異演」のコーナーも10回目となった。どこまで続くかわからないが、とりあえずは小生が元気でいられる限りネタ切れになるまで少しずつやっていきたいと思う。今回はカラヤンのシューマン・交響曲第4番を取り上げる。
初めてこの曲を小生が聴いたのはサヴァリッシュとドレスデン国立Oの名盤であった。もう20年以上前の話であるが、いまだに小生にとってこれを凌駕する演奏はない。しかしもはやこの演奏はもう小生にとっては「殿堂入り」してしまい、普段はカラヤンの演奏を聴くことが多い。どれもなかなかの演奏で、とても聴きごたえがあるからである。
カラヤンはこの曲を得意としていて、NHK-FMでも何回かライブが放送されていた。現在ではCDでは公式で4種類の演奏を聴くことができる。


57/4/25-6   ベルリンPO (I:10'30",II:4':27",III:5'20",IV:8'11")
To TOCE-3507

72/1-2   ベルリンPO (I:10'39",II:4':42",III:5'47",IV:8'49")
Gramophon 445 718-2

72/8/13(L)   ドレスデン国立O (I:10'23",II:4':18",III:5'42",IV:8'28")
Gramophon 447 666-2

87/5/24(L)   ウィーンPO (I:11'00",II:4':49",III:5'51",IV:8'53")
G POCG-4086


上記の他にもライブ録音などが存在するかもしれないが、1.2.4の3種類のスタジオ録音は偶然にも15年ずつの間隔があり、数年前復刻されたドレスデンとのライブ録音は2.と同時期の演奏である。

1.は最近になって国内CDが出た57年の録音。ステレオ初期の時代の録音にもかかわらず、モノラル録音なのが惜しい。しかし、50年代後半のベルリンPOはまだ重厚な響きを聴かせてくれているし、後年の演奏のように洗練されていないのが面白いが、なかなか意欲的な演奏を繰り広げている。録音の影響だろうかオケはバランスが悪く、内声部が聴こえなかったりで、第2楽章の弱々しいバイオリンソロなど後年のカラヤンの演奏では聴くことのできないものである。だが全体としては演奏はなかなか白熱しており、力強くかつスタイリッシュ。第1楽章などのように加速するところはたたみかけるような激しさがあるし、元気な第3楽章も名演。

2.はベルリンPOとの全集となった録音で、72年のスタジオ録音。小生はどうもこの時期のカラヤンの録音(特にグラモフォン盤)がほとんどが表面的なので聴くのがしんどいのだが、シューマンはなかなかどうして名演奏だ(他に交響曲第2番も名演)。表面的に陥っていないのは、問題あると言われてきたシューマンのオーケストレーションに対してオケが鳴っているからだろうか? 1.と比べても燃焼度というか、激しさが後退した分、当時のカラヤンの意図が行き渡っているというか、完全に反映されたかのような演奏である。重く引きずるような第3楽章、力のこもったクライマックスを築いている終楽章など、限界のところまでやっているが、とても充実した演奏である。

3.は72年のザルツブルク音楽祭でのライブ録音。2と録音日付が近いが、まず冒頭部からドレスデン・シュターツカペレの響きに惹きつけられる。とてもいい。カラヤンはこのオケと録音するために東ドイツまで行ったという70年の有名な「マイスタージンガー」全曲以来の共演だった筈だ。この伝統のオケの上質の響きをよく生かして、美演を繰り広げている。このオケはこの数日後(72.9.1-12)にあのサヴァリッシュと全集を録音するわけであるが、改めて聴いてみてこの演奏もサヴァリッシュ盤に匹敵するくらいの価値は充分にある。なんといういい音なのであろう!聴き終わってもまた始めから聴き直してみたくなってしまう。このCDはどういうわけか市場からすっかり姿を消してしまった。

4.は最晩年の録音で、老境に入ったカラヤンの耽美的演奏が聴ける。ここには1-3にあった戦闘的要素はない。しかし、ダイナミクスは不足していない。一貫してこの曲のすべてを知り尽くしたような演奏。ウィーンPOとのこの演奏は極めて凝縮した内容にもかかわらず、決して重くはなく、、よくこなれていて、とても自然に耳に入ってくるのだ。いままでにはなかったおおらかさと安らかさを感じる演奏である。


カラヤンのシューマンの「第4」、上記の4種、どれもとてもいい演奏である。まず3.のドレスデン盤。確かカラヤンはこの数年後にやはりザルツブルク音楽祭で再びこのオケと共演し、ショスターコヴィッチの交響曲第10番他を演奏したと思うが、それもCD化されないものか...4.のウィーンPO盤も非常な名演。1.も存在的には地味だが一聴の価値あり。2の全集はあまり注目されていないようだが、小生はなかなか気に入っているものである。




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