今月へ

[斜め、滲んで]


11月30日
  きょうの映画ではヴィンセント・ギャロは監督だけでなく、バドという
アメリカをさすらうバイクレーサーを主演している。ギャロは苦悩し、泣いてばかりいた。
「ブラウン・バニー」死なせてしまった恋人。ばかなやりかたで、死なせてしまったこと
が精神を苛んでいる。ほんとうに、ばかなことで、としかいいようがない。彼が乗るホンダ
のオートレース用のバイクには77と書いてあった。77はギャロの前作「バッファロー`66」
となにか関係があるのだろうか。アメリカの広漠としたハイウエイをバイクを黒いバンに載せて
走るとき、独特の美しさと悲しさが風景に滲んでいた。
映画館をでて、憂鬱さが残っていて、あのギャロの独特の映像によって、苦しみと不可能な愛の
激情が、見ていた者を物語のなかに強烈に引き込んでいたことに改めて気付いた。帰りの渋谷の
道を歩いた。あたりがちょと違ってみえた。
                

[自転車が止めてある]


11月28日
 もっと自転車は大きかったはずなのに。ビルの巨大なガラスの壁で
感覚のスケールがくるってしまった。


[にぎりしめているものは]


11月25日
 多和田さんのパフォーマンスの衝撃がやまない。世界との向き合い方を見たように
も思う。言葉はブレてゆくような、ばらばらになるような、そういうところを通らないと
息ができなくなってしまう。わかったような気になっているものは、わかったような言葉で
まとめられているから。でもほんとうは、言葉は、わけのわからないモノかもしれない。
傘というものを言葉でできるだけあらわそうとしてみるとわかる。傘ひとつでさえすっかり
言葉であらわすことはできない。そういうブレてゆこうとする力、ことばの過剰さにある
狂、のようなもの、その振動するエネルギーをみうしなわないこと。ばらばらになる恐怖
に耐えること。そこを通ってゆくと、言葉は息を吹き返す。そのことを忘れてはいけない
のだ、きっと。
 


[2003/11京都・多和田葉子さん]




11月24日
 夕暮れの祇園。ごみ一つ落ちていない木造の町屋が磨き上げられてずらりと
並んで建っている。この一区画の異界には、伝統とお金の匂いがする。凄みに
おじけづいてしまいそうになったとき、石畳にビニール袋を発見。ほっとする。
しばらく見て歩いて、そろそろ別のところへ行こうとしていたら、華やか舞妓
さんの白い顔に気付いてそばへいって見る。黒塗りの車に髪を結い化粧をした
着物姿の舞妓さんが、厳しい顔で一人運転席の隣に乗っていたのだ。車の隣で
は携帯電話でスーツ姿の男が打ち合わせをしていた。打ち合わせが終わると男
は運転席に乗り車を出した。なんだか見たくない場面をみてしまった。なぜか
血なまぐさい印象が残った。

 今回京都へ来た目的は、京都ドイツ文化センターで多和田葉子さんの朗読を聞く
ため。もう20年もハンブルクに住み活動している多和田さん。ジャズの高瀬アキ
さんとデュオを組みドイツでも大評判らしい。本当に、これほどおもしろい朗読の
パフォーマンスは生まれて初めてだった。多和田さんの才能と知性が炸裂している。
一時間半ききごたえのある言葉と、ひとつひとつにぴったりの語りの工夫はメタレ
ベルにまで語られた内容を引き上げる。写真の右、白いボールを抱えているのが
多和田さん。左の赤いボールを抱えているのが高瀬さん。この写真からもわかる
ように高瀬さんはピアノだけでなく、多和田さんと言葉を投げ合うように語りに
も参加。ここでは二人でボールを叩いて、何かの祭のようなリズムで話すように
言葉を放ってゆく。多和田さんのダイナミックに言葉の解体と組み立て。現実へ
の批判。鋭いパロディ。お金や人生の世俗の価値観。残酷。命の価値。自由。言葉遊び。
一つの言葉から隠れていた言葉が掛詞で引っ張りだされ、別の世界観をつれてくる。
など息をつかせない。
それがボールをぼんぼん叩くという身体を通ったゆるいリズムのなでユーモラスなのだ。
二人の息もあっているし、まるでリズム漫談?!のような感じ。そのうえ自分自身の現在
もパロディにして容赦なく笑われてる、という。これは小説家の範疇をこえている。
多和田さんはあえてパフォーマンスをすることで自分をだしているのだ。突出して
くる言葉の威力は、すごい。言葉はテキストにもライブにも秩序を破る力があり、開かれている
ことを実感させてくれた。抱えられた大きな丸いボールは二人のようでもあり、言葉の身体のようでもある。
月と太陽のようでもある。昼や夜の二つの時間のようでもある。世界のなかで日本人としてある二人
のようでもある。考えがずっとひろがってゆく。
 また、孔子の論語を読むブレヒトが、納得したり、反発したりするのも面白かった。
孔子の論語を書き下し文で読んだあと、いまの日本の話しことばに言い直す。そして、
その論語を読むブレヒトが、孔子のこの言葉は民主主義に反している、国民を侮蔑している、
などと憤ったり、やはり孔子はすばらしいなど納得したりしてゆく。一人の人の価値観を軸にした
気持ちの動きが、一つ一つ見えてきて、神聖化されたブレヒト観や孔子像が破られて
くる。と同時にヨーロッパの知性と東洋のテキストの関係への私たちの見方の不必要
な幻想が剥ぎとられてゆく。これも高瀬さんと二人での朗読だった。


[ブレ]


11月19日
 弾かれて飛んでゆく。ひとの言葉にびくっとなるとき、何が弾かれたのだろう。
何かが、弾かれたのだと思う。震えたり振動したりで、気持ちが淀まずにすむのかも
しれない。でもあまり強いのは困る。言葉で蹴られたりしたら凹んでしまう。きっと
痛い。このペットボトルはボーリングのピンに見立てられて、ボールに弾かれて飛んで
いる。

 詩人の関口凉子さんからはがきをいただいた。関口さんはいまフランスに住んで活躍
している。日本に一時期国したとのこと。私の詩集「アローホテル」をパリに持って
帰って読んでくださるらしい。フランス語のすきまで読む日本語の詩集はどんな感じ
になるのだろう。これも詩のエクソホニー、母語の外へ出る旅、なのだと思う。


[明暗]



11月17日
 明るいところと暗いところ。見ているのは同じくらい。瞼をとじている闇。
目を開いて入れる光。闇を外側と感じにくいのはなぜだろう。薄暗いと、輪郭
がとけだしモノや人とさえも溶け合うような気分にひたされる。


[歩いて缶入りココアをのんだ]







11月14日
 晴れた道。軽いカメラを片手に持ってあるく。道を歩いているだけなのに、
ちょっとしたものに出会うのがうれしくて、撮ってゆく。ズームがかきない
カメラなので寄ってゆく。子どもになったみたいにあちこち吸いよせられな
がら、じぐざぐに歩いていると、生きてるだけでめっけもの、と誰かが言っ
ていたのを思いだした。


[線状の流れ]


11月12日
 きょうはとても雲の流れが速かった。水平にさらさらと流れてくる線状の
雲の流れがめずらしい。
 きょうはテーマ詩をまだ書いている。もう10時過ぎてしまった。



[目と目が合えば!]


11月11日
 今日ホームページを開いてみたらカウントが30000を越えていました。
多くの方に見ていただいてほんとうにありがとうございます。どなたが踏んだのか
連絡がなく残念でしたが、見てくださって感謝しております。

 ところで短歌の雑誌『歌壇』で歌人の太田美和さんと4回に渡りコラボレーション
をします。テーマを決めて詩と短歌を書くのですが、書く日を決めました。
 一回目は明日、11月12日です。太田美和さんも私も、明日は、同じテーマへ
向けてダッシュ。
 太田美和さんの歌集『水の乳房』には意識にものぼららいような抑圧で、
言えなかったようなことがすらりと詠まれていたり、文学が楽しい気持ちが滲んで
いる魅力的な歌集です。
 歌集『飛ぶ練習』では私と写真家の蓑田貴子さんとの写真展にこられて詠んだ短歌
が載ってます。




[うちがわからヒカリ]


11月9日
 もうすぐ30000のカウントになるようです。うれしいです。
 30000を踏んだ方、どうぞ教えてください。


[ガラスのエスカレーター]


11月8日
  店内放送は聞こえていたのかも知れない。しびれたように動かない頭で
エスカレーターで運ばれていた。触れることができないようにガラスを張り
めぐらせたフラワーショップに、花が飾られている。頬に触れるくらいの近
さにピンクやオレンジ、白や紫。花のそばをエスカレーターで通りすぎても
何も匂わない。まるで血のかよっていない人のようにするするとフロアーを
通過してしまった。


[身をのりだすと]


11月6日
 こちらにむかって雲が流れてきた。窓の外はずいぶんと明るい。
 このごろは料理で電子レンジとハサミを利用している。タマネギ
もカボチャもラップして電子レンジの根菜ボタンを押すと丸のまま
柔らかくなる。それをハサミで切り、最近買った軽いフライパンで
あじつけする。けっこうおいしくできる。包丁はなるべく使わない。
切るときはくだものナイフで削ぐ。肩に負担がかからない工夫もけ
っこうおもしろい。


[少女の頃を遠く離れて]


11月2日
 きょうは私の誕生日だった。なんと新井啓子さんからおめでとうメール
をいただいた。ありがとうございました。実はまだ肩が痛くて薬を飲み首
の牽引リハビリをしているところ。体の変化なのでしょうか。新井さんも
不調とのこと。お互いうまく乗り切りたいものです。毛利珠江さんはイス
タンブールから帰国し、このところ力作の詩にのぞんでいらっしゃるがや
はり体調に気を遣っているようす。みないろいろあっての日常に詩がある
わけなのですね。めげずにやってゆきたいものです。

さて、更新のパソコンもなかなかきついので、おもしろかったもの
を箇条書きにします。

 井坂洋子詩集「箱入豹」 
 斉藤美奈子編「男女という制度」21世紀文学の創造7 岩波書店
 小倉千加子著「セックス神話解体新書」ちくま文庫
 東 浩紀著「動物化するポストモダン」講談社現代新書
 韓国映画「ほえる犬は噛まない」
 継続中の東京-ヴィリニュス・コラボ『 L O C A T I O N  』〜12月25日


[ふかまる秋に]


11月1日
 きのつかないうちにもう11月。ふかまる秋に赤い花を。
このサイトのカウンターがもうすぐ「30000」になろう
としています。多くの方が訪れてくださった。ありがとうご
ざいます。日々を伴走してくださった方々に心から感謝して
おります。
 私のサイトはBBSもなく芳名帳すらありません。不定期の
更新をできるときにして、内容もほとんど自分の言葉と写真。
このようなシンプルなサイトをつづけてご覧いただけたこと
本当にうれしいです。もし30000を踏んだらぜひお知ら
せください。このサイトが継続できたお祝いにささやかなプ
レゼントをしたいと考えてます。よろしくお願いします。