今月へ 2004年4月分 [覆いつくす]4月28日 春の空き地の勢いはとまらない。激しく根が地中へめぐり、草の葉は地面を覆いつくそうと ぐんぐん葉をのばす。緑は目にやさしけれど、植物はほんとうは動物をコントロールしている。 草を食べなければ、動物は生きてゆけない。苦い葉、甘い葉、鎮める葉、興奮させる葉、治す葉、 草はすごい。 [空き屋の庭に咲いていた]
4月26日 暑いほどの陽ざしのなかで、静かに青い炎のように咲いていたヤグルマソウ。ときどき風に 揺すられて、白い粉のような花粉をとばしている。風のなかにはケサランパサランが滞空し、 変わった飛行船のように、ゆっくりと目の前を通過してゆく。 空き屋には以前、両親が住んでいた。速いもので父の七回忌。お経をあげていただいた。 [詩・すくう]
4月21日 すくう どこにも天使のウタが聞こえていない。でものこの街は「天使の詩」の撮影された街だから、 聞こえていないウタがどこかに流れているかもしれない。そう思って撮った写真には運河 のコンクリートの壁が映っている。岸壁に消えている電球の並んだオープンカフェが映っている。 椅子には誰も人がいない。カフェには一人も人影が見えない。見えない人といえば天使は見える ものではない。どこかに掛けているのかも知れない。写真には、公園の茂みに逃げ込むリスのスピード が茶色のブレで流れている。カフェの銀のスプーンで茶色をかき回す。回転スピードがリスと合えば、 リスの言葉が聞き取れる。リスの言葉、聞き取とれるようになるスプーンは人と動物の断絶を救う。 すくったのは少しの珈琲ではないのですか。すくったのは少しの苦みと少しの可否。可か否か、 きちんと言葉で論じあうべきが、世間を前にして堂々と意見を言えない。人の目を気にして、救われない。 テレビニュースで救出の番組。危険地帯から救われて戻ってきても、危険地帯へ行ったのが悪いと にらむ人の目に殺されてしまうこともある。 せっかく生還できたのに。世間の目がニュースに鎌を刺す。世間は人の海。人の海の人海戦術は 火を消すこともあるけれど、 火を噴くことも更にある。否の火の悲の海。火の苦役。人の海には出たくない。 誰もいない部屋の中でリスの写真を見ていよう。 動物の言葉は茶色から、というウタが頭に浮かんできて、メロディーをつけたくなってきた。 頭を誰かに触れられたように、不意に気分が晴れてきた。部屋にはワタシが沈んでいるだけで誰もいない。 ただ、リスのスピードが写真から来て、 生きているようにワタシの肩に飛び乗ったような、気がした。いま。 [新しい葉]
4月18日 ようやく花粉症のマスクを外して歩ける季節になった。うれしい。 養老孟司・吉田直也「対談 目から脳に抜ける話」(ちくま文庫)をぱらぱら 捲って再読していると面白い文章に印がしてあった。 養老「日本人の漢字読みというのは、中国人の漢字読みともちょっと違う」 「私はそもそも漫画をルビの付いた漢字だと解釈しています。絵の部分 が漢字で、吹き出しが音なんですね。」 「高橋留美子って人が「うる星やつら」って漫画を描いた。その中に 錯乱坊(チェリー)っていう坊主が出てくる。その錯乱坊が吹き出し でこう言ってるんですね。「揚豚」。これにさらにルビを振りまして 「カツ」。これ自体が実は漫画ですね。」 日本の漢字は漫画だということ、それが回角という文字を読む脳の部分では まにあわなくて脳の別の部分も使って読んでいるという。日本人は文化的な このようなシンボル体系をもっているので、どちらかというと形態とか映像とか 視覚が強い文化だということのようだ。 [斜め 流れ]
4月17日 どくとくの川の匂いがする。樹からは緑色が流れだす。私もとどまりなく流れてゆく。 どんどん変化して、一年前の私は今の私とは違っている。前に見た映画をまたみたら 全然別のことに関心をもった。以前の詩を読むと、こんなこと考えてたのだ、と思う。 でも、なぜか日常のなかでは私が変わらないように誤解する。 [シルクの空]
4月15日 どこかシルクのスカーフのような空だと思う。白い花と枝のプリントされたふんわりとした布の 感触。 ●お知らせ 『歌壇』5月号(本阿弥書店)に短歌と詩のコラボレーションが載りました。 匂い香りのテーマは「キャベツ」です。タイトルは大田美和「薬食同源」北爪満喜「そしてしますか」。 本屋さんでみかけたらどうぞお手にとってみてください。 [ずっと同じ場所で]
4月14日 どのくらいの年月を、そうして過ごしてきたのか。招きながら。 詩の言葉のことは、どう言っても、外れてしまう部分があって、 言えば言うほど不安になる。言葉と入れ込んで向き合う、というとき、それ はほとんど書く現場でのことだと思う。感じ考えたこと、を文字に成り代わらせる といっても、書き始める以前には感じ考えたことというほどまとまったものは 頭のなかにないことがある。それでも、詩を書きたい気持ちがあって、書き始めると、 言葉と出会って、何か書ける。その書く現場で言葉と向き合い、かたちもなかったものが 閃いたりする。卵が先か鶏が先か、というようなことがある。だから、おもしろい。 [道の端に置かれたロッカーの中で]
4月13日 何か置くためにロッカーを道の端に設置してあるのかも知れない。捨てるにしては土埃が しっかり付いていいて、長く雨ざらしになっている感じがする。中で人形がフラメンコを踊って いる。オーレッ、と言っているような。 [葡萄酒]
4月12日 小さい頃、童話で「赤ずきんちゃん」に出てきた葡萄酒。ぶどうしゅという言葉は すごくおいしそうだった。赤ずきんちゃんがおばあさんのお見舞いにゆくとき、バス ケットにぶどうしゅを入れていた。そのバスケットにのぞくパンや果物といっしょに 葡萄酒のビンがみえていて、それはそれはおいしそうだった。「ぶどうしゅ」は私の なかで、決してワインでもなくお酒でもない。赤ずきんちゃんの抱えていたバスケットの 絵にあった未知の飲み物。 言葉について。言葉に出会ってこその詩だと思う。入れ込んで向き合って、白熱して、 その後、ふと言葉と出会うことがある。言葉の方が詩では内容よりも大切といったのは、 誤解されるかもしれない。なにごとかを現すのは大切。でも現すためには 意識して言葉と向き合わなければ、考え感じたことを、文字になりかわらせる、なんて できない。入れ込んで、意識して言葉というものとつきあていなければだめだ、と私などは感じる。 文字になりかわっていただくためには。作者が思い入れて書いても、その無形なものが、 文字に、なりかわれるかどうか。ありきたりな書き方では思いもなにも言葉に現れないだろう。 入れ込むのは思いではなく言葉とやってゆくときの意識。なりかわっていただく書き方。 そして詩では、言葉が文脈とは別に単独で浮き上がることができる。詩では言葉が 浮き上がり、輝く。だから、文章の内容よりも、言葉の方が大切だと思っている。 そして、さらに言うと・・書き方は、不思議だけれど技法ではないようだという感触が・・。 [新芽]
4月10日 どうしてかエピソードや内容が大切に書かれている詩が多い。倫理的な詩も多く書かれている。 そうした事柄が書ければ、言葉のことはあまり大切ではないようだ。ナレーションのように 書かれていると、内容が大切で、詩は大切ではないように思えてくる。詩では、どちらかといえば 言葉の方を大切にしたい。事柄、図柄の柄ではなくて、書くその場で、起こってくる、生きた言葉。 言葉と言葉が結ぶ関係。それは言葉と言葉の出会いだったり、言葉と作者の出会いだったりするわけで、 現場の手探りのなかから詩は発芽してくるように思う。 [空のように]
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4月8日 どういうときに爽やかなのかと思う。坂道を歩いていて晴れていて空が青い。 道沿いの街路樹も青のなかに葉の落ちた枝をさっぱりと広げている。お茶をいた だいたテーブルで、ブルーが静かに澄んでいた。爽やかなときは青い色のそば にいるときかも知れない。Mさんに見せていただいたたくさんの写真。イスタン ブールのボスボラス海峡もさまざまな青にみたされていた。Mさんの詩はこの海峡 を見晴らせるベランダで、さまざまな青に洗われながら書かれたのだ、と写真を みながら思う。イスタンブールがブルーのイメージに染まってゆく。 Mさんすてきなひとときをありがとうございました。 [6種類]
4月7日 銀行の入口で6種類の言葉が警告していた。 言葉が不信感をいいたてる。そういう私は花粉症のマスクにメガネに帽子。 疑わしいまなざしをむけられるかもしれない。カードでお金をおろす前に まず帽子を脱ぐ。マスクもとろうかと思ったれどやめた。この近くの別の銀行 には入口にインターネットカフェがある。ほんとうに窓口とつづいている。 銀行の窓口の呼び出しを聞きながら、軽食をとっても喉に詰まるのではないか と思うけれど、ちゃんと客が入っている。コーヒーやランチセットを飲食して いるのだ。この銀行の自動ドアが開くとコーヒーのいい匂いがする。こちら の方が不思議といえば不思議。たしかに。 [泡、あわい]
4月4日 気温7度の日の気泡。キリンビールのアンテナショップ。 詩のことをたくさん話す。知らないサイトでいい詩がきっとたくさん書かれていると Tさん。それを探しだすTさんの熱意。とても前向きなパワー。詩を書いているHさんは 老人ホームの介護スタッフと知り、つい母のことを話してしまう。Uさんにデジタル写真の サイトをいくつか紹介。さっきとても魅力あると返事のメールをもらう。 作田教子さんからはがきをいただく。暖かい言葉をありがとう。 [波打って伸びる]
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4月3日 気温が下がったり上がったり。ぽわっとする頭は風船がつまったように揺れる。 時間はすばやく走りぬけている。春って速い、といつも思う。このあいだ友達から 朝早く電話があった。海の見えるホテルにいるという。陽差しがいっぱい部屋に 満ちていて、明るい海がまぶしいという。波音、聞こえる?とすこしだまった。 受話器からは波の音はやってこなかった。海のことを話している友達の言葉から 波の音は聞こえてきた。これから遊覧船に乗るという。すると船の後ろに跳ねる 白い波しぶきが跳ねだした。