今月へ [近所の人にススキをもらった]![]()
9月28日 なんて季節感のない頭をしているのだろう。近所の人にススキをもらって きょうは十五夜、ということを教そわった。月はよく見るのに、季節とはあまり 関係して見ることはない。月の出てくる詩もそういえばほとんど季節とは関わり あいがないようだ。 [不意の目隠し]
9月23日 通りかがりに緑のものに目隠しをされ、我に帰る。考えごとをしていると 頭の中ばかり探っている。鮮やかな緑の葉が風に吹かれて私の顔をかすりな がらゆらゆらする。 [カラフル]
9月19日 「わたしは銀座にいました」と、月がいいました。 「わたしは闇の育たない夜と、わずかしか見上げる人のいない 空で、あんがい気楽にカラフルな通りを眺めることができまし た。」 [光ノ花]
9月15日 世田谷線の改札には光ノ花。乗り降りしている日々のひとコマに咲いている。 [二度呼び止められ]
9月11日 どんなに紫陽花が咲き乱れていても、サクラが満開でも、花を撮っていて 呼び止められるということはないのに、この彼岸花を撮っていたら二度、呼び止め られ、話しかけられた。住宅のフェンスの柵と柵のあいだにカメラを入れ庭の赤い 花を撮っているとちょうど家の人が自転車で帰ってきて、よかったら内側から撮ったら と、私を庭に招きいれようとさえする。私は通りかがりなので遠慮してお礼を言って 歩き出した。それから区民会館の花壇に出たらそこにも赤く咲いていたので撮ってい ると今度は自転車をとめて女の人がきれいね、と言いながらやってきて、私も撮りた いと話しかけられた。この人はどうもフィルム写真が趣味らしい。持ち歩いていない ので、といいわけのように言っていて、彼岸花には白い花もあると教えてくれた。 おもうに、秋だからじゃないだろうか。秋は人恋しくなるから。みしらぬ人に声を かけたくなる。・・・しかし、きょう私はケータイで見ず知らずの人と話してしまった。 なぜか受け答えが合っていて、てっきり友達だと思い込んで。でもケータイの音が あまりに聞き取りずらかったので家の電話でかけ直した。すると、友達は「私、話して ないよ」という。じゃあ、あれはいったい誰だったの、とびっくり。ケータイは声が 変わってしまうから、こんなこともあるのだ。気をつけよう。番号の押し間違い。 [休憩中の箱]
9月9日 晴れたり降ったりでここのところ何度か雨宿りをしたりする。 突然ものすごい雨がスコールのように降るので、傘をもっていて も役に立たないことがある。少し熱っぽくなって額に「ひえぴた」 を貼っていた。最近は「ひえぴた」がコンビニでも売っていて助 かっている。不安定なのは台風の影響なのだろうけれど、そうい う今も窓の外では雷が鳴っている。雷の音は空気の振動としてや ってくる。窓を振るわせる音といえば、火山の爆発音も空気の振動 でやってくる。高校生のころ、浅間山が噴火する爆発音が窓を打ち 身体を振るわせ、とてもこわかったのを覚えている。テレビで浅間山 の噴火のことを報道していて、長野に暮らす友人たちのことが気に かかる。生活や仕事に影響がないといいのだけれど。高校の頃、 大きな噴火のときは火山灰が降ってきて、傘をさしながら下校した。 傘が積もってくる火山灰でだんだん重くなった。その感触は異様で 雪とも雨とも違っていた。黒く汚れなかなか落ちなくて重い。気を めいらせるものだった。 [すこし吐いて]
9月4日 ときどき体調が悪くなるのか食べた餌を吐いてしまうシロ。毛玉が溜まってしまったの かもしれない。吐いたあとはすこし恥ずかしいような感じがするのか尻尾を下げて、 こそこそ部屋のすみに座る。私がすっかり吐瀉物を取り除き、床を拭き取り、手を洗ったりして いると、落ち着いてくるらしく、いつものように動きはじめる。 [どの手がすきか]
9月3日 どの手がすきか たくさん手のある仏像をまえにして木の床が歩くと軋る。どの手がすきか考えてみると 鈴の転がる音とともに寺の長い廊下へどこからかトウキョーの家のミケがやってきた。その あとをミケの仔のシロもついてくる。ワタシは二匹の猫をみると、緊張がほぐれ、きゅう にお腹がすいていることに気付く。すると腹がきゅーと鳴っているのが耳に入った。 さっき床が鳴っていると思い込んだのは間違いで、腹の音だったかもしれない。 ほんとに? 耳が宙吊りになると腹の広ささえわからなくなる。きゅーと兎が草むらで 鳴いたりする緑の葉のなかに、デイジーが咲き、黄水仙が揺れ、暖かな陽のふりそそぐ 野がひろがって霞んでゆく。 ワタシはどこを巡っているのか。気が付けば暗くぼーと廊下が細長く闇のなかを伸び、 ときどき激しく曲がったり下りや昇りの坂になってなおも続いていたりする。ワタシは どこを巡っているのか。野が急に冷え、怖くなる。胎内巡りも出口があります、お降りの 方はお急ぎください。車掌の声が木霊した。細長い闇に感応したのだ。ここへは電車に 乗ってきたから。 たくさん手のある仏像をまえにして、どの手がすきかなどと考えたのは、 何か手をほどこしたい事態がもちあがっていて、何かしなければいけないのだ。 ワタシは突然、廊下のミケに「サカナのとりかたを教えてくれない」と声をかけて聞いていた。 「いいよ」とすぐにミケが応えた。シロにも同じように聞く。「サカナのとりかたを教えてくれない」 すぐに「いいよ」とシロも応えた。感動で体があつくなる。はじめてミケの言葉がわかった。 ミケと話した。シロと話した。 動物になれということだろうか。それがほどこす手だとしたら。 ちゅうぶらりんな両手は床につけ、後ろ足を踏ん張って、ジャンプするように駆けてゆこう。 いいよ。 これは誰の声? [轟音のモーター]
9月1日 先月、田舎へいったとき、坂道を上がるとものすごい轟音のモーターが唸っていた。 耳を覆うほどの場所になんと猫が。少し目ヤニがついている。汚れているし、きっと ノラ猫だ。耳のいい猫のこと。うるさくないはずはない。でも目はとても細く縦長に なっている。気持ちのいい印がでている。そこは少し肌寒かったから、モーターの間 が暖かくて、気持ち良かったのかもしれない。錆びの出ている鉄の柱が、近寄るなと 警告している。人が近寄らないから、安心。人に追い払われないから安心。黄色がか ったモスグリーンの目は通る人を眺めてなにを思っているのだろう。うるさくないの。 と話しかけてしまった。何も言わずに猫は少しこちらを向いた。