今月へ


[上空の空/カップの雫/7月の世田谷線]


7月23日

 去年の夏に見えた雲が
 光になって
 いまここへやってきた
 ずっと一年もの間
 パソコンのハードディスクの中で
 あの雲は情報になって眠っていた
 パリへ向っていた機内の
 乾いた空気が
 こんどは私のヒフに呼び覚まされ
 のどがひどく乾いてくる
 機内の空気は じゃあ私のどこでどんなふうに
 眠っていたのだろう



夏には詩誌たちが集まる両国
会場で話したり 買ったり 読んだり 聴いたり
売り子をしながら 
詩と作者の混じりあう交差点の渦に飲み込まれて
みたされて疲れ 小さな打ち上げをしたあと
ふらふらと 帰りの電車に乗った

途中で乗り換えて
これで渋谷までゆけると安心
バッグの中のきょう出会った詩誌を読みはじめる
引きこまれて 電車は走って
なにか長いような気がして
気付いたら 蒲田 だった
カマタって! 
なぜ渋谷じゃないの!
もう終電近く
渋谷から乗り換える私は
何に乗り換えたら家へ帰れるか焦って
駆け出すと改札を抜け
夜の蒲田に出てしまった
非現実の蒲田
この前 蒲田派 朗読会で
詩を読んだり夜の月を映したから
蒲田に覚えられ
呼び寄せられてしまったのかと
はっとする

そうだ蒲田派朗読会のあと多摩川線に乗ったのだ
思い出して ダッシュ
ホームに泊まっていた車両へ駆け込んだ




世田谷線を見下ろせる
高層ビルのキャロットタワーの展望台に
ときどき 息をつきにくる
空へ向けて 何を放ろう
地へ向けて どう頷こう
視線が大きくゆさぶられる

そのなかをオモチャのような世田谷線の車両が
行き来する


[7/17のシロ・環状7号線・住宅街で]



7月17日
 きょうは暑かった。梅雨明けの照りつける陽差しがつよくて、
肌がひりひりする。シロはコンクリートにひっついて涼をとっていた。
昨日は夜になって義母と送り火を焚いて、先祖の霊を見送ったのだけど
見送ってからなにかしんとした感じがあって、やっぱりたくさん
来ていたのかも知れないと思った。
  環七ももう夏空。魚のような雲が泳いでいるように見えるのは
冷たい水中をイメージしたくなったからかもしれない。汗が
髪からしたたりおちる。

明日は、もっと夏らしくなるらしい。

ベンズ・カフェは夕方からだからなんとかパワーを保って
行けると思います。
みまさま、お待ちしてます。
オープンマイク、ぜひご参加ください。
詩を読んで聞いて暑さをのりこえましょう。



 


[7/15の月 7/16の月]

7/15の月


7/16の月


7月16日
 新月のすぐあとの15日の月は三機の飛行機とともに視界にはいってきました。
きょう16日の月はいつも通る横断歩道を過ぎたところで、汗を拭いたあと視界に入りました。
少しづつ膨らむ上弦の月。ここ数日間は晴れるから見つけられそうです。


[ポエケット風景]



7月13日
「もーあしび」や個人の詩集やたくさん売れて帰りは身軽でした。
会いたかった詩人や懐かしい面々に再会し、売り子をしたり、お茶して
詩のことを話したり、打ち合わせをしたり、とても充実してました。
いつも開催に当たって、ご努力してくださるヤリタミサコさんや
川江一二三さんに感謝です。


[ベンズ・カフェ 7/18 月写真上映+朗読]

高田馬場のベンズ・カフェ。みなさんいらしてください。
お待ちしてます。

主宰者の 服部 剛さんよりお知らせです。 

7月18日(日)は「笑いと涙のぽえとりー劇場」です。
僕等それぞれの笑いと涙の日々を、詩の言葉を通じて語りあい、
僕等の心と心をつなぐ月に1度のかけがえのない詩の夜を、共にすごしましょう。

ゲストは現代詩でも実績と実力のある詩人の北爪満喜さんです。
詩の世界とは何なのか?考える有意義なひと時となるでしょうから、ぜひお越しください。

「ぽえとりー劇場」は皆さんの言葉にふれる・味わう・耳を澄ます朗読会です。 
朗読する5分はあなたが主役です。
それぞれが自分らしい花を咲かせる詩的空間で過ごしましょう。

1人の持ち時間は朗読前のトークを含め5分で詩を1編か2篇、
朗読する詩にテーマはなく自由です。

あなた1人で来るのも、興味ありそうな友達と来るのも大歓迎。

※お客様としての参加も歓迎です。
※開演の18時30分迄にお越し下さい
※入場無料(店内のドリンク・フードを要オーダー)
会場の電話番号と地図

お問い合わせは gouhattori@yahoo.co.jp 迄お願いします。 




[詩 「あの光る海の波というのは」]

7月8日

  あの光る海の波というのは      北爪満喜




梅雨に閉ざされる前の晴れ間
海岸の駅に着いた 


土産物屋の前を歩いて
古い旅館や料理屋を通り過ぎると
街並みの合間に
まばゆい光が
海面いっぱいに広がって
ちかちかと目を差してくる
まぶしくて 痛い 光が 
眼球を抜けて 
痛みから痛みへ続く溝へ 繋がってしまう  
まぶしいのに暗闇へ

ひび割れながら
海岸へと交差点をわたる私に
今 いるのは
昨日隣り合った 短い白衣を着た女の人 の仕草

昼のカフェで
荷物を置いて休む私の 
隣で
空のコーヒーカップを前に
うつむいて
同じ姿勢で ときどき指先で涙をぬぐっていた
どこで働いている人だろう 食品売り場の人だろうか
女の人のテーブルは丸く 
私のテーブルは四角く
黙ったまま隣り合って
女の人の指先が 繰り返し涙をすくい続けるのを感じていた

染みこんで

ここにはない 
なま暖かい雫が 
指先を這ってくる
話し声が聞こえる しなければいけない これをしなければ 
重く押しつけられてゆき 椅子の底が抜け
溝へ 流れ込んでしまう
あのときもあのときも 手の指で雫を払った

顔を伏せないのは 涙を払うのは 短い休憩時間が終わるから


海岸につくと

真昼の岩場は明るくて
潮だまりで小ガニが歩いていたり
岩に張り付いた貝が爪のような先端を閉じて硬く眠っていたり
ざわざわと無数のフナムシが岩の隙間に走り込んで
きらきらと押し寄せる波から逃げていたりする

フナムシの消えていった岩の隙間につぎつぎ打ち寄せる波を見ていると 
波の音に
ぼんやりして

たえまなく打ち寄せては引く海水が
皮膚の下の闇の溝を
洗っているのに気付いた

短い白衣の女の人は
顔をあげ
丸いテーブルから離れていった

闇の中から 私も顔をあげる

波が岩に当たって砕ける
泡だって波が引いてゆく
洗われて 岩が光っている


[6月17日 海岸]