[近付いて / 気持ちよい向き]
9月25日
緊張に背筋がのびていた一羽。ささっと電線を走る。
飛び去られるかもしれない。でも飛びさられなかった。
少し近付いて、気持ちを伝えられたのか。それから二羽で飛んでいった。
乾いたコンクリートの上で、気をゆるして横たわってみせる。
何度かころっと向きを変えて、
たぶん気分がよいし、体も悪くないのだ。
すこしだけなついたミケがくつろぐ姿をしていると、こちらまで肩の力が抜けてゆく。
[雲の早い日]
9月25日
ふと空をみあげる。
雲の流れの早さに、みとれる。
歩いているのに、ひとつも動いていないように思っていた自分の内側にも
雲が早く通り過ぎてゆく。その流れに深く呼吸を一つ。
[9月22日/数日後には国境を越えて別々の場所にいる二人]
9月25日
数日後には国境を越えて別々の場所にいる二人。
この日の朝電車に乗って、会場で二人の写真をみて、この日の夜電車に乗って、戻ってきた。
[上空の音]
9月24日
風の音がしていると感じている。風の音はここではないどこかで聴き、いまではない時を
吹いているのに、風の音がしている。
風がふいている。
ここは聳え立つビルの角で、切られるように曲がった空気が固まりになって吹き付ける。
草たちの緑に染まることもなく、漂う花のかすかな香りもなく
速度となって髪を巻き上げ、頬を、腕をこすってゆく空気。
それでも、ここではないどこかで吹いていた風が
肌の遠くに棲んでいるから。
風がふいていると思えて、空を見上げた。
[「籠の中の乙女」/「レーピン展」など]
9月15日
「籠の中の乙女」
イメージフォーラムで「籠の中の乙女」を見ました。珍妙な姉妹のダンスはわすれられません。
そして家の外を知らずに育った子供達、兄と二人の姉妹が、親に違う言葉を教えられて
話します。高速道路は「速い風」テーブルの食卓塩の瓶は「お電話」。
「ちょっとお電話とってください」と塩をとってもらうわけです。
名前もつけられてない子供たちももう思春期、淡々と壊れてゆく家族の籠が恐く
その世界は放り出されたまま映画がえっ、と終わってしまう。
これは納めようがない。その架空の場が私に割って入ってきてしまいました。
「レーピン展」
渋谷文化村でロシア19世紀から20世紀はじめのイリヤ・レーピンの絵を見ました。
怒りに目を剥く「皇女ソフィア」政治の闇への肉薄や、突然家へ帰ってきた兵士と、
思いがけない違和感で向き合う家族の「思いがけなく」など、表情が場の複雑な関係
を語る手法がとても印象深かったです。過酷な船曳たちの労働の姿や、楽しそうに盛り上がっている
コサック兵の様子など、迫ってきて、これまであまり目にすることがなかった場面が
見られました。
8日の「現代詩の会」は珍しい方が来てくれました。小川三郎さんと、颯木あやこさんです。
そして島野律子さん、森岡美喜さん、薦田愛さん、と私の6人での合評会です。皆さんほとんど
作品を持っていらしたので、時間が足りなくなる充実ぶりでした。特にいつもは聴けない
小川さんの感想が聴けたのはよかったです。
8月25日26日の26時間連続イベント「飛ばない本」
のトルタプリンターはこんな感じでした。私もパソコンに向かってマウス握っています。
会場写真トルタプリンター フォトギャラリ