メモリーズへ

2013年4月分

[負われるとき]

・・・・・

4月28日


話している言葉を

 まなざしのなかでちかちか
   
    ツツジが照らすから

       くねりながら黒い影は

         つぼみを開く
          
           光に鳴って
  
              つぼみの黒く込めていた影が 

                空間に開き まなざしを揺らす速度で

                 鳴る言葉を カフェのテーブルで

                    ざらざらでも  鋭利でも

                      違う耳が聞き取ってゆく

                         耳へ 光をまぶ  す  血のようにも 紅 く

                           ツツジは開けば 咲けば

                              散ってゆける 破れて

                                そのように  

                                  地上の時間に含まれる

                                    違う耳と耳の深く 言葉が つなぐ
  
                                       散ってゆく影 黒いつぼみは  散ってゆける

                                           萎れ 枯れ 落ちて 破れる

                                             終わる

                                               負われるとき 時間に

                                          かさっと
       
                                      音がして

                                  終わりが 

                               地上で  カフェで 

                           始まりになってゆく   
                
...................




[詩「奇妙な祝福」] 4月21日 4月も末なのに、きょうは真冬の寒さです。ストーブをしまわなくてよかった。 現代詩手帖4月号の詩誌月評で、瀬崎祐さんが詩誌「モーアシビ」の私の詩を 評論してくれたので載せます。よかったら読んでください。
「奇妙な祝福」 雨が降っている ばしゃばしゃいう土に跳ねる音 雨の中に黄色や緑のくだものが落ちてきて 泥に沈んでゆく そして  あの家へ 飛んだ 縁側に頭を向けて 畳に横たわっている父と 向き合うようにハの字になって 横たわっている母が 何か楽しそうに話している 腕枕の二人の目が 庭の青年を見ると 知らない青年は目を輝かせ もうすぐ生まれるんだという 私も目を見た 父の目と母の目と私の目が重なると発光する光源になった 白い洗濯物が暁光に染められて 風にゆれる と 腕が温かい 大きな赤ちゃんが 抱かれていた 私の腕が暖かく抱いていた しっとりする重みと暖かかさを そおっと胸に抱き寄せる   すると 沈んで 坂になった 坂を上ってくる女が手のひらに 小さい赤ちゃんをのせてやってきた 洗濯物は曇り空にかげりながら 風にゆれ カーテンが赤い花のデザインになってゆれた 女は「この子は残念だけれどロボットとして育てようと思う」と言った おどろいていると また生まれたら また別に育てられる と手のひらを窪ませる どっと 浮上するように 目がさめた きょうは私の誕生日だった なかった私が あるようになって 生まれた家 あの家で 育ててくれた父や母が死んでしまったあとで 生まれようとして生まれた大きな赤ちゃんと 小さな赤ちゃん それが何かではなく もたらされ 腕が暖かく抱いたということ