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2015年1月分


[雨上がり/お知らせ]





1月28日

まるで光がのっているように椿の葉が白く光っていた朝
滴り落ちているような光が枝でゆれ まぶしい
冷えて強ばった体を動かしようやく爪先を靴に入れる
まぶしさのなかに花はただ色彩に見える 花弁で雨の雫がきらめいた


【お知らせ】

3月1日 荻窪6次元で前橋ポエトリー・フェスティバルのプレイベントを開催します。
プレイベントの前にワークショップをします。

「お散歩写真・お散歩ことばワークショップ in 荻窪」

カメラを手に荻窪の街なかに散歩に出て、写真を撮り、3行程度の短いことば(詩)を添えます。
誰でもできる簡単なワークショップですので、お気軽にご参加ください。

(1)会場 荻窪駅東改札前集合 街なか散策
(2)時間 集合13:00/散策13:00-14:30/写真セレクト&ことば作成(6次元)14:30-15:30
(3)ワークショップ参加費 500円
(4)予約・問合せ先 芽部・新井隆人 relaxin.a@blue.plala.or.jp/090-8048-1664
 
定員10名程度。当日参加可能ですが、原則事前予約制。
デジタルカメラを持参することが参加の条件です。少雨決行。
1時間程度街なかを散策しますので、歩きやすい恰好でご参加ください。
当日制作した作品は、5月に開催される「前橋ポエトリー・フェスティバル2015」で展示します(展示会場未定)。     



【前橋ポエトリー・フェスティバル in 東京】
 日時2015年3月1日 15:30-18:00
会場荻窪六次元
 会費2000円
①座談会
②オープンマイク(朗読) 朗読は誰でも参加可。
最大35人入場可、現在予約22名。予約はお早めに。
 twipla.jp/events/128485


[雫の指先]



2月22日

しずかに地上に触れる雫。
葉を落とした枝に雫の指先が触れる
木肌にしみこんでゆくとき
眠りを起こされる幹は
もうすぐひび割れる樹皮の震えを
流れ落ちる水の膜を振るわせて
伝えている  


[白い鳥、白い花]






1月19日
今年初めて見る水仙のさわやかさ。冬の陽差しに透ける花に見とれていたら、
水面をすーっと白いものが過ぎてゆく。はっと目で追うと白鳥だった。

先日、竹橋の近代美術館へ高松次郎展を見に行ったのでした。
高松次郎の作品の変遷を見渡せる展示をみて、影の作品などもよかったけれど、
この日、常設展の出光真子の映像と言葉の作品「おんなのさくひん」が最も刺さったのでした。
はっきりど形のわからない映像に、聴くのも苦痛な女性蔑視の言葉が流れてきて、
それがある時代、一般的に口に上っていた言葉だということでした。
出光興産の創業者の父について娘の出光真子は「徹底した儒教的、家父長的男女観を抱いており、
妻及び四人の娘を「女こども」として軽蔑しその自立を否定し人格的に抑圧したと語っている。」
ということで、この展示が納得できました。父だけでなくこんな世間だったのだろうと。
それをシンプルに的確に作品化した聡明さ!
常設展には、ほんとうに女性のアート作品の展示数が少なくて、というかほとんど無くて、
この流れが現在も、なのだなとおもってしまう。

もう一つDOMANI・明日展、国立新美術館では、関根直子「言葉の前の音・人形遣いの声・一つの場所」という
紙と鉛筆だけの作品が最も印象に残りました。
黒くうめつくされたそこへ、引っ掻き傷が走って、意味をなさない線は黒を掻き取り、白く細く。
いびつに折れ、横に引かれ、まだ思いにも悲鳴にもならない何かが、刻まれていた。



[朝の椿/「詩の練習」]



2015年1月11日
朝の光にもう椿が咲いている。すぐに鳥が来て赤い花を食べるからきっととても美味しはず。

【お知らせ】今年は現代詩手帖で詩誌月評を担当します。


詩誌「詩の練習」第15号に参加しました!

テーマは「アンチ現代詩特集」 で私の詩のタイトルは
「【レポート詩】 2014年10月18日 初めて前橋で「ビブリオフリマ」が開かれた」です。
                              
執筆者は、倉田良成、北爪満喜、水島英己、金澤一志、野村喜和夫、苗村吉昭、野村龍、谷合吉重、瀬崎祐。
書き出してみると私の他はすべて男性詩人でした。


【レポート詩】 
2014年10月18日 初めて前橋で「ビブリオフリマ」が開かれた
                              
                                 北爪満喜

キャリーケースに
奇妙な祝福を詰めて *1
電車に乗った
紙の束のそれを手渡しに

手から手へ渡し 代金を受け渡すから
きれいにテーブルに並べよう
読まれないと渡せないから読まれますようにと
飛躍に賭ける気構え

肩のバッグを掛け直し
電車に乗って一度乗り換え 駅に着くと 
駅からは アルキロコスまでバスに乗った
ケヤキ並木の木漏れ日のしたを歩いても行けるけれど
もう出店がはじまっているから 
木馬が出迎えるアルキロコスへ
みえないにぎわいを予感して
キャリーケースとバスにゆられる
いま髑髏がごろごろ積まれた店の前を通り過ぎた
アルキロコス
アルキロコスってギリシアの詩人の名前です
詩人の名前をカフェにつけた店主さんは
以前にも
豆を挽く音が朗読にかぶらないように注意して
おいしいコーヒーを入れてくれた

緑濃い 五月のケヤキの並木で制服を着て歩いている透明な女子高生
みゆきちゃんおおさわさんなおこともちゃん 真昼の広い交差点に呼び出しそうになってやめる 

蓮の花のように詩誌が咲き 鈴音のように雑貨が瞬く店内の丸テーブルをシェア
いくつかの紙束を並べ終える
ちらほらと入るお客さんは
だれかと知り合いなのか 子供連れもめずらしくなく
波のように子供の声がつよくしぶきをあげては引く

テーブルに重ねた 黙っている言葉
寡黙な激しい厚み 紙束

子供たちの奇声は 体熱のナイフ 飛んでくるナイフに刺され
傷口をアンティークガラスの光にゆすられ
耳の後ろに ギリシアの詩人の足音がせまってくる
愛 ち ぐん 馬 と ち 木 さい 玉 とう 京  
黙っている言葉をもって集まったひとたちと
テーブルの上に重なる 黙っている言葉
もうこれが
空間の詩  錯覚してしまいたくなる

店の白い壁の展示には 写真と 写真に添えられた文字
 同じ「かぼちゃ」 なら
 僕は「かぼちゃの馬車」に乗ってみたいな *2
写真と 写真に添えられた文字
 奈落はすぐそこにあって
 はっきりと明示されていて
 だれでも簡単に開けることができる *3
シンデレラの僕も 奈落のとっても 
部屋のなかでコーヒーやジュースをのんでいる
背中や肩をつないで 作用しないはずはなくて


  (アンチ現代詩を自由に解釈せよと言われても雛形を持たずに書くのが詩。苦肉の策でレボート詩。)
*1 北爪満喜詩集『奇妙な祝福』(思潮社) *2 松本兼成の作品 *3 新井隆人の作品