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夏の水 窓をあけると屋根で区切られた 空へ 木々の陰から 車の轟音のなかでも鳥の声がする ピチュピチュ 空へ 鳥の濡れた声が 跳ねる 青い 鳥の声を追い 青い噴水 と うえをむくと 私のなかの水も 打たれ 水の私の 池が打たれ ゆれわれる水面から 沈んでいた噴水の塔を立ち上げる 首を反らせる もっと反らせる 噴水は 私を 吹き上げて 水玉で 私を ひと粒残らず 空へ 吹き上げないないだろうか うえをむく首筋に汗がつたい鎖骨へ溜まる 空のなかへ水玉で浮く私を 漂わす 青を追う 青 水玉で浮く 高度数百メートル ─ 水玉の私が浮いている 「金属の鳥がきたらいい 飛翔する固い嘴で 私はかきまわされてしまうの くるくる玉の背で反りかえり いくつもの渦を絡めてまわる 光に砕け 青をぶつけて つよくまぶしく きらめいて 車の流れる横断歩道で あまりにも 空がまぶしくて 見上げた少年の水晶を すーっとくぐって焼いてしまう」 高く あふれるように 夏 水玉の私が浮いてゆく