作品3 次のページへ
裸の枝で街路樹は まっすぐ空へたっていた 秋の舗道に きれいな色 触れたい 手をのばす 尖った葉脈 まるく反る軽い固さ 屈んで指でつまみ上げ 手のひらへおく 私の枯葉 今日 私の枯葉を拾った 誰もいない部屋に戻って 遮光カーテンに手を掛ける 掛けた幅だけ光が切って うす暗かった私の部屋は 黒のなかに沈みこむ 黒い 部屋に テーブルだけが 日差しにかかり 金色に浮く 浮島 部屋の浮島が 私を吸いよせ 私から 無言で 今日の揚がりをせびる ポケットをせわしく探ってしまい 黒い海の テーブルのうえ 枯葉は すばやく並べられ 乾いた色のとりどりの葉脈の地図の骨を反らせた 固く尖って骨を反らせた 裸で空へたっていた アナタの一部をもらったの なにもいうこともできずに 私は黙ったままだった 黙って固くなっていた そのときみしりと背を伝い細い音が痛く 走った テーブルのうえ 葉が割れていた 欠けてできた葉の刺が 窓からの日差しを掻き毀し 葉脈の皹を細くくぐった光が皹を 押し開いた 薄いピンクが 葉の破れ目を 放射状に 吹き上がった 光って 花が ピンクの光が 部屋のなかに咲き出した ずっと ここは黒かったから ずっと 黒い部屋だったから まぶしい 涙がながれてしまう 顔を覆うと 私は細り するすると 肩から服が落ち 脱ぐともなく素裸の枝になり 震えながら まっすぐに 冬の部屋に立っていた まっすぐ空へたっていた アナタの一部をもらったの