健康住宅・ソーラーシステム実例

  

 健康住宅という言葉を最近では頻繁に目にするようになりました。建材に含まれる化学物質が住んでいる人に与える影響についてはまだはっきりとはわかっていませんが、頭痛・めまい・脱力感を引き起こしたり、さまざまなアレルギー発症の一つの要因になっていると考えられています。住宅は生活する基本となる場であり、特に乳幼児にとってはその室内環境は深刻な問題となります。人体に悪影響を与えると思われる室内の化学物質の量や種類がガイドラインで記されてはいますがあくまで目安であり、その影響も個人差があるため化学物質をどれだけ減らせば安全な健康住宅となるのかは、決めることができないのが現状です。最近ハウスメーカーでも健康住宅を売り文句にしていますが、内容は様々であり使用しているクロスや接着剤の有害物質を減らしただけで健康住宅と大々的に宣伝しているところもあるようです。そんな状況の中で当設計室なりに取り組んだ健康住宅(全く化学物質を含まないという意味ではありません)の実例をコスト比較も含めて掲載しました。これから建築を考えている方、今建築途中の方が化学物質の少ない住宅を作るための参考になればと思います。

ここで考える健康住宅とは健康住宅の実例とコスト比較健康住宅建築記録写真Home

ここで考える健康住宅とは

高気密住宅は健康住宅?

1. 高断熱・高気密住宅--夏、冬ともに室温をコントロールし易く室内温度差・温度変化が少ないため
            高齢者の脳溢血が少なくなる。24時間強制換気する事でダニやカビの発生を抑えられる家。

2. 化学物質を含む建材を極力使わない住宅--化学物質による室内汚染が少ない家

 1と2は全く別の事なのですが一般にはごちゃまぜにして健康住宅として扱われているようです。1と2の仕様を合わせた住宅が良いという考え方もありますが、1の仕様は気密性が高いため室内の化学物質汚染を防ぐには24時間強制換気が絶対条件となります。窓は小さく外部との接点が機械的な換気システムだけでつながっている住宅となってしまいがちです。快適性を求めるあまり雨が降り出しても気づかない、小鳥の声や花の香りにも気づかない住宅で良いのでしょうか?
ここで考える健康住宅とは、設備で快適性を求める前に建築的に夏涼しく冬暖かい工夫をした、自然を感じながら住んでいける家を2の仕様で建てた住宅です。

昔の家にならう。

 昔の家は自然素材だけで出来ていました。もちろん化学物質とは無縁で、材料が持つ自然な調湿効果もありました。気密性は低く、家中風通しがよくてカビやダニが発生しにくかった。軒(ひさし)の出が長く低いことで夏の強い日差しをさえぎり、冬には日足の長い暖かい日差しを室内にたっぷり採り入れ、庭に植えてある樹木が気温調節をしてくれていました。
 今の住宅にこれをそのまま持ち込むことは、コストや防火上の規制、敷地の大きさなどにより難しいのですが、求める健康住宅の基本がここにあると思います。

1.狭い敷地でも出来るだけ軒の出寸法を大きく取る。

 特に南側の大きな窓の上は軒の出を大きく取りましょう。南側は庭を確保しますから狭い敷地でも軒を大きく出しやすいはずです。夏の強い日差しをやわらげ、冬には陽足の長い日差しをたっぷり取りいれることができます。雨が直接当たらないので外壁や窓が汚れにくく痛みにくい利点もあります。

2.気密性より断熱性と通風。

 高断熱と高気密は別の事を意味します。住宅に断熱性は必要ですが、極度に気密性を求める必要はないと思います。閉め切った部屋で空気清浄機を使うよりも、窓を開け放した方が室内化学物質の濃度を下げるにはずっと効果があります。大きくあけられる木製の引き込み戸を南側に設け、北側の風の通り道にも窓を設けるだけで夏には快適な通風を得る事ができます。木製の引き戸は気密性断熱性共に問題になりますが、内側に引き込める障子や雨戸などで性能を高める事が可能です。考えてみれば窓をピッタリと締め切ってしまいたいようなひどい暑さや寒さは一年のうちほんのわずかのあいだだけではないでしょうか。

3.開放的な間取りにする。

 人が精神的に落ちつくためにはある程度の部屋の広さが必要なようです。どのくらいの広さがあればいいかは、そこで暮らす人の数や関係によって違いますから特定できませんが、小さい家を細かく区切らずに最小限の寝室だけを確保し、普段過ごす部屋をできるだけ広く取ることです。狭くても他の部屋や廊下、庭との空間的な連続感を感じられる開放的な間取りにしたり、天井を高くして広さを感じさせることもできます。ドアは閉じた位置が常態ですが引き戸は開いた位置でも常態となります、引き戸の良さを見直して開放的な居間・食堂を作り精神的にも健康に過ごせる住宅としましょう。

4.出来るだけ自然素材を使う。

  合板、集成木材、ビニールクロス、畳、断熱材、塗料、接着剤、防腐防蟻防ダニ処理剤

 上記の材料に気を使うだけで住まいの化学物質をかなり減らすことが出来ます。
今や室内のドアや枠材、床材、柱まで表面は無垢材に見えても ほとんどが木のチップを接着剤で固めたもので出来ています。また、室内の壁、天井はビニールクロスでぐるりと囲われ、畳は防ダニ加工、土台や土は防腐防蟻処理されているのがほとんどです。これらは施工が簡単なのと狂いが少なく、目に見えるクレームが出にくいので施工会社が好んで使用して一般住宅の標準仕様になってしましました。(分譲マンションも同様です)しかしこれらを改善することはそう難しいことではありません。無垢材や塗り壁、薬品処理しない材料はほんの20年ほど前には当たり前だったのですから・・・。要は施工会社へ具体的に材料や工法を指定することです。

5.日々の暮らし方が大事。

 昔はどこの家でも年末の大掃除の時期には畳を上げて干したものです。いくら通風を良くしていても窓を開けなければ効果がありませんし、まめに掃除をしなければダニが発生しやすくなるのは当たり前です。昔のように大掃除で畳あげる事はできないまでも日々の生活で家族の健康のためにできることは努めてすることが一番大事なことだと思います。


健康住宅の建築実例とコスト比較


建て主Hさんとの出会い。

 1997年8月。Hさんからの電話。細川さん著”薪ストーブのある暮らし”を読んで当設計室を知ったとの事。
 1997年9月。建て替え予定の古い住宅におじゃまして初対面。17.19.21才の男の子をもつ40代後半のご夫婦とそのご両親とお会いする。仕事の都合でオーストリアに数年間滞在したことがあり、日本の住宅のコストや作りに対して疑問をもたれていた。
幸いにも気に入っていただき、設計依頼をうける。

ソーラーシステムと健康住宅

 Hさんは普段から自然指向の生き方を実践されていて、化学物質を極力抑えた住宅にしたい、太陽熱を利用したソーラーシステムを取り入れたい、と強く要望。
ソーラーは冬屋根の上で暖められた空気をファンで床下に送り込んで暖房、夏には熱い空気を外に排出し、同時にお湯取りも出来る自然のエネルギーを利用したシステム。乾燥した空気が家全体を1年中回っているためカビやダニが発生しにくい。ただし空気の流れる道に有毒物質が存在するとそれもそのまま運んでしまう恐れがあるため建材に含まれる化学物質を抑え込むことが重要となる。

基本設計

 約60坪の敷地に42〜43坪の住宅、そこに大人が7人住む。両親、夫婦、子供三人。しかもそれぞれプライバシーは守りたい。リビングダイニングは広く。二階から海が見えるので二階リビングは絶対条件。ソーラーのシステム効率からくる間取りの制限も頭に入れながら計画を練り1998年2月に基本設計完了。

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コストを抑えた上で出来るだけ化学物質を削減する

 室内空気中に含まれる化学物質の濃度の危険値は示されていますがあくまで目安であり、化学物質の人体への影響も個人差があるためそれを含む材料をどれだけ削減したら安全な住宅なのかは決めることができません。また住宅に使われている化学物質を含む建材を全て取り除くことはコスト面や施工上極めて難しいことですし、引越後に運ばれる家具やカーテン、カーペット、家電製品からも化学物質は放散されます。このような状況で今できることは、決められたコストの範囲内で意匠、施工、法規上の問題をクリアしながらできるだけ化学物質を含まない材料をどのように選択するかという事です。

Hさんの家での材料選択とコスト。

 43坪の特定の住宅で使われる材料によるコスト比較ですので坪数や仕上げの仕様によっては違いが出てきます。あくまで参考価格です。この住宅の場合だいたい差額 2.000.000円。50.000円/坪upと考えられます。
建て主さんが納得できる仕様で、予算に応じた選択をする事になります。


化学物質を抑える事が目的ですが、それ以上に自然素材を使った最終的な仕上がりの良さや、年月を経た時の状態を考えるとコストアップしても充分に価値のあるものと思います。

問題となる材料

材料及び部位

一般住宅

今回の健康住宅

削減できる化学物質

コストアップ

防蟻薬品 防蟻処理薬品散布 木酢液散布 有機リン・ピレスロイド +10000円*1
防腐防蟻薬品 土台 防腐防蟻処理土台 ヒノキ四寸角+基礎パッキン 有機リン・ピレスロイド +20000円+20000円*2
集成材の接着剤 集成材、防虫処理材 無垢材 ホルムアルデヒド +100000円(桧)
(管柱で約1000円/本)
合板の接着剤 床下地合板 F2.F3合板 F1合板 ホルムアルデヒド +10000円
(約100円/枚)
合板の接着剤 屋根下地耐水合板 F2.F3耐水合板 F1耐水合板 ホルムアルデヒド +10000円
(約100円/枚)
ビニール・
接着剤
壁仕上げ 石膏ボード下地
ビニールクロス貼り
ラスボード下地漆喰塗り・
石膏ボード素地仕上げ
ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・フタル酸エステル・有機リン +250.000円*3
ビニール・
接着剤
天井仕上げ 石膏ボード下地
ビニールクロス貼り
杉板張り・シナベニヤ(F1)
目透かし張り
同上 +120.000円*4
合板の接着剤・塗料 床仕上げ 合板フローリング 松無垢板張り ホルムアルデヒド +210.000円*5
合板・パーティクルボードの接着剤 キッチン 既製品 シナベニヤ(F1)による家具工事 ホルムアルデヒド 0*6
集成材の接着剤 枠廻り木材 既製枠材 無垢枠材 ホルムアルデヒド ?*7
合板の接着剤 内部木製建具 既製建具 シナベニヤ(F1)使用の建具工事 ホルムアルデヒド ?*7
塗料 塗装工事 有機溶剤塗料 オスモやリボス
などの自然塗料
ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン +1.000.000円*8
断熱材 壁内断熱材 グラスウール 発砲ポリエチレン ホルムアルデヒド・ガラス繊維 +400.000円
現場使用の接着剤 フローリング、
合板、コルクタイルなどの接着
酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤(速乾性木工用ボンド) エマルジョン系の接着剤(水性形の木工用ボンド)コルクタイルはリボス社のリナミ(天然ゴム系) ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン 0*9

参考


防ダニ薬品 防ダニシート畳
スタイロホーム畳
防ダニシートを使わずヒバシートなどで防ダニした畳 有機リン・ピレスロイド 一畳当たり+3000円〜
畳は別発注が可能

赤字はぜひ選択したい項目。黄色はできれば選択したい項目。

*1 木酢液は支給。10リッター×2で1万円くらい。防蟻処理で通常4〜5万円、その値段分で散布してもらう。自分でやれば2〜3万円くらい浮く。
*2 土台は一本当たり1000円程度の差額。基礎パッキンと専用水切りで通常の換気口との差額が2万円くらい。
*3 漆喰塗りでm2当たり約1500円の差額。石膏ボードにエマルジョンペイント仕上げなら約500円/m2 upでできる
*4 杉板張りで坪当たり約3000円の差額。オスモ・リボス塗装するならさらに約3000円/坪up。
*5 松板張りで坪当たり約5000円の差額。オスモ・リボス塗装をするならさらに約5000円/坪up。(塗装は自分でも可能)
*6 仕様にもよりますが、標準タイプのシステムキッチンと同額くらいでできます。
*7 材料だけでなく大工手間の値段が上がるので不明(すみません)。枠廻りと建具でだいたい30万円upくらいでしょうか?
*8 自然素材を使うと塗装面積が大幅に増えます。自分でできるところは自分で塗りましょう。オスモやリボス塗料は自分で買って支給も可能。
*9 現場使用の接着剤は以外に盲点。せっかくF1.F0の合板、無垢板を使ってもここまで注意しないと無意味。現場では当たり前のように大量に使っています。

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