CD 「575」 曲目解説
1.『鼎』(松本雅夫作曲)
尺八1米沢
尺八2難波
尺八3菅原
〈575〉を結成するきっかけになった作品です。 東京西日暮里に「和音」というライブスペースがありますが、ここで2001/3/7に関 東学生三曲連盟加盟校出身の尺八奏者が集まり「同窓会ライブ」が開かれました。 集まる顔ぶれを聞くと本当に懐かしい顔ぶれで、「このメンバーが集まるならば、 〈鼎〉をやろう。」と、話はトントン拍子でまとまりました。 〈鼎〉は、学生時代に〈尺八三本会〉の演奏に憧れ、何度も聞いていた作品です。 当時、難波さんは私の2〜3期上の先輩で、すでにその頃「中央に難波あり。」と言 われていましたし、久仁さんは日大理工の尺箏研に名誉部員として出入りしていて、 NHKの育成会にも私と同期で入りました。 この「入った」というのがミソで、彼は見事に卒業しましたが、私は半期で放逐されました。 (正直昔から、あまり出来は良くありませんでしたね〜。^_^; ) さて、この〈鼎〉という作品は1969年に作曲され、タイトルが表すように3本の尺八 がアンサンブルの中で見事に鼎立しています。 そうであるからこそ、ライブの練習をしている時も他の2人から受ける刺激が非常に 勉強にもなりましたし、個性の違いが演奏していて本当に心地よく感じました。 この感覚が3人同様であったからこそ〈575〉結成に至ったのだと思います。 では、裏話を一つ。 CDの収録はこの作品から始めましたが、収録作品の数が増えアンサンブルがより緻 密になって行くに連れ、「もう一度〈鼎〉をとり直そう。」と誰かが言い、結局2回 収録をし直しました。 このCDに収録されているのは、「三度目のナントカ」にあたる録音です。 それだけ三人共にある種のこだわりを持っていて、2002/6/21に開いた 「CDリリース記念ライブ」(新宿オペラシティー:近江楽堂)では、1曲目に演奏した作品です。 (米澤 浩)
2.『ソネット1』(三木稔作曲)
尺八1菅原
尺八2米沢
尺八3難波
1962年に作曲されたこの作品は、文字通り新しい尺八アンサンブルの草分けとなった存在です。 長管尺八の低音から始るこの作品は、学生時代にも「新鮮でカッコ良く」感じていました。 その頃大学のクラブには木管の鳴りの悪〜いA管しかありませんでしたが、冒頭の3 小節だけを見よう見真似(聞き真似?)で遊んでいた憶えがあります。 「ソネット」でも個々の道を歩んで来た個性豊かな3人が、アンサンブルを通して一 つの所に収斂していくのは演奏していて本当に心地よいものでした。 (米澤 浩)
3.『尺八三重奏曲』(船川利夫作曲)
尺八1難波
尺八2菅原
尺八3米沢
1965年〈尺八三本会〉委嘱。 60年代70年代学生に好んで吹かれた一つであり、我々三人も例にもれず馴染みの曲である。 作曲者の一楽章の解説に「自己の内部に渦巻く、どろどろとしたどうしようのないも の、愛への表現」とあるが、まさに《575》の思いに通づる世界であり、中年パ ワーの油ぎったしつこさで攻めてみた。 (難波 竹山)
4.『三本の尺八のための作品No.1』(前田憲男作曲)
尺八1米沢
尺八2難波
尺八3菅原
ご存じジャズ界の大御所前田憲男氏による尺八三重奏。 以前積極的な活動をしていた新典音楽協会という組織の委嘱であります。 この組織は会員から会費を集めそのお金で作曲家に曲を委嘱し、出版し邦楽曲の充実 を目標に作られた組織でありました。特に邦楽人口底辺拡大をテーマに しておりましたので、「易しい曲を」という依頼で委嘱するも、なかなか初心者用と いうような一筋縄でいくような曲は少なかったように思います。 575の「7」にあたる米澤氏はこの協会の事務局をやっていた時期もありますし私 (菅原)も会員でありました。 現在休会中とのことですが、ぜひまた再開して欲しいものです。 さて、作品についてですが、尺八の持っている五音階を(1尺8寸ならレファソラ ド)基調に作られているため普段メリ音を小穴を使って涼しい顔で鳴らしている 「7」氏には小穴無用で逆に大変。ところが逆境に出会うと力が湧いてくる「7」氏 は見事に(多少の腱鞘炎を伴いながらも)演奏したのでありました。 非常に速いパッセージ、同じ旋律を三人で同時に演奏するのですが三人とも楽器の長 さが違うので(第1尺八1尺6寸、第2尺八1尺8寸、第3尺八2尺1寸)速く奏す るとこれがムカデのようにザワザワと聞こえてきて、とても気色が良く?響きます。 異色の作品といえるでしょう。 (菅原久仁義)
5.『風動』(杵屋正邦作曲)
尺八1米沢
尺八2難波
尺八3菅原
この作品も1965年〈尺八三本会〉の委嘱によるものである。 当時〈三本会〉のレパートリーの代表曲であると思われる作品で、作曲者は「風動」 という文字に大変魅力を持ち、後に「第四風動」まで作っている。 70年代の現代邦楽全盛期の尺八三重奏の古典ともいえるこの曲を当然取り入れた。 (難波 竹山)
6.『ソネット4』(三木稔作曲)
尺八1菅原
尺八2難波
尺八3米沢
ソネットとは4行詩を差し、ここでは小品の意味で使われている。 ソネット1は官能的な旋律がテーマの尺八三重奏。「愛のコリーダ」という映画(映 倫の規制により日本ではカット番上映)の中にも使われている。 ソネット2、3、5は二重奏もしくはソロ。三重奏は1と4だけである。 この4も映画のために作られた曲であるがグッと趣が変わって「山村の働く人々」と いう硬い内容の教育映画のテーマ曲となっている。 (菅原久仁義)
難波竹山(NAMBA TIKUZAN)
1970年中央大学理工学部物理学科入学と同時に山本邦山に入門師事。 74年NHK邦楽技能者育成会20期卒。以降NHKFMに多数出演。 76年RCAレコード山本邦山作品集にて尺八二重奏を山本邦山師と共演。 77年以降2年間、浦和産経学園尺八教官。 79年尺八アンサンブルのグループ「尺八1979」結成、以降毎年リサイタルを催す。 82年西独バードホンブウルグ市にて文化交流団に参加。 83年バンコクへ泰日親善日本伝統音楽演奏団に参加。第1回「難波竹山尺八リサイタル」を開催。 「尺八1979」渋谷ジャンジャンに出演。 84年台北市芸術季に参加。NHKカセット音楽教材「尺八のすべて」の歌曲編を担当する。 85年北京、洛陽、上海にて公演。筑波博エキスポプラザメインステージで助六太鼓と共演。 86年日本の伝統ベルサイユ展に参加。尺八・箏・ピアノトリオ「ザ・クレインズ」を結成。11月韓国公演。 87年「ザ・クレインズ」バリオホールにてリサイタル。第2回「難波竹山尺八リサイタル」を開催。 90年アメリカ・サンノゼ市にて第1回ワールドフェスティバルに参加。 91年アメリカ・ポートランドにて公演。 92年ヨーロッパ各地にて公演。 93年文化庁主催大分公演に出演。 94年アメリカ・タンパにて国際音楽会議に参加、演奏。ニューヨークの聖ピータース教会にて演奏。 現在:都山流尺八楽会大師範、現代邦楽作曲家連盟会員、竹山会主宰
菅原久仁義(SUGAWARA KUNIYOSHI)
都山流木賊明山、琴古流高橋渉童、佐藤豊童、横山勝也の各師に師事 76年 北海道三曲コンクール尺八部門第1位入賞。 77年 NHKオーデイション合格。NHK邦楽技能者育成会第22期卒業。全日本三曲コンクール総合第1位入賞。 80年 ドイツ大使主催パンムジーク伝統楽器による現代演奏コンクールにて独奏部門第二位入賞及びJML賞 合奏部門第二位入賞及び審査委員賞。 85年 信濃三十三番札所コンサートツアーを行い、善光寺など35カ所にて公開奉納演奏。 86年 アメリカサンフランシスコにてレコーディング&コンサート。 87年 東京、札幌連続尺八リサイタル(以降現在までに五回)。 89年 旧ユーゴスラビアのザグレブにて公演。 92年 外務省の協力による中国広東省の広州、深川での公演に参加。国際交流基金の 海外派遣により沢井忠夫氏と共にイタリアのローマ・ミラノ、ポルトガルのリスボンなど6カ所にて公演。 94年 札幌市の派遣によりアメリカのポートランドにて公演。 95年 フランスのパリ、リヨンにて公演。 98年 国際交流基金の派遣によりブラジル、コロンビア、グァテマラにて公演。 99年 札幌コンサートホール主催公演にてソリストとして札幌交響楽団と共演。 フランスのパリ日本文化会館にてリサイタル。ベルギーの大使館広報文化センターにてコンサート。 01年 アラブ&邦楽アンサンブル「ヤスミーン」にてチュニジア公演
米澤 浩(YONEZAWA HIROSHI)
宮田耕八朗氏に師事。1978年日本音楽集団に入団。 1979年以降個人的にも海外での活動も開始し、現在に至るまでヨーロッパ・アメリカ ・カナダ・旧東欧・中国・台湾・韓国等で公演し、90公演以上に及ぶ実績を持つ。 最近では韓国で開催された「日中韓音楽祭」にソリストとして招聘され、これを契機 としてアジアへの意識を高めている。 又、日本音楽集団での活動を通じ、ゲヴァントハウス・ニューヨークフィル・ヘルシ ンキフィル・読響・都響・京響等内外のオーケストラとの共演経験も多い。 91年からは熊沢栄利子(箏)とジョイント・リサイタルシリーズを開始した他、スー パー歌舞伎(八犬伝他)や、NHK「ニュース21」のテーマで尺八を担当するなど演 奏のフィールドは広く、併せて市民文化講座やワークショップなどでも講師を務め、 尺八の普及に努めている。 2001年「ドイツ・バイエルン独日協会40周年記念コンサート」、「オーストリア・ シュライニング音楽祭」、「韓国・ジャパンウィーク(光州)」から招聘を受け、国 内では(財)地域創造主催の「ステージラボ仙台セッション」で邦楽ゼミの講師を務めた。 2002年「オーストリア・シュライニング音楽祭」を中心として箏の熊沢栄利子とヨー ロッパツアーを実施した。 現在、アジアンゾリステン《ペンタジア》主宰。尺八トリオ《575》メンバー。日 本音楽集団団員。