ACRI「こんな映画を観た...」のメニューへ戻る
監督:石井竜也あのね、正直言うと、思ったほどでなかった。
・・って言うと誤解されるな。ええと、言い直し。思ったほど地雷ではなかった。というかまあ、もともとかなり巨大な地雷だろうと思って構えてたからかもしれないですね。言い始めると止まらないことに変わりはない。でも着想はすごいと思うし、設定も魅力的だ。話の組み立て自体も、まあ、そこそこだと思う。それはいいんだけど、なんというか、器用貧乏な感じがどうしても拭い去れない雰囲気があると思う。SFでもなくファンタジーでもなく、その中間を狙うんだったらもっと端的に狙えばいいのだし、どちらかに寄るんだったらもっときちっと寄せたほうがいい。テーマみたいなものは匂わされるんだけど、それが映像からのインプレッションとして伝わってこない。
「人間が触れてはいけないものがある。」もしそれがテーマの一つだとしたら、クリーチャーとしての人魚を画面に映す必要はどこにもない。「触れてはならない」のだから、イメージとして、幻想としての亜久里(吉野公佳)だけで押せないだろうか。「水棲生物としての人魚」を押し出すなら、もっとうーじゃうじゃ出てきたっていいはずだ。(絶滅寸前って設定だとしても、ね。)それこそ密(浅野忠信)に群がってきたっておかしくない。(そういう設定なんだろう?)中途半端な所で異種族間(厳密には違うんだけどな)のピュアな恋愛にしようとするから、おかしくなる。
海の色は綺麗だ。でも、石井監督自身がテレビなどで「あれはデジタルなんですよ」とふれて歩いているのはどうかと思う。(隠す必要もないけど、せめてプログラムの中でばらすだけにしてほしいよね。)モーフィングにしろ、「とてもお金がかかった」のはすでに問題ではない。金をかけたCGがウリになるのは、最低ジュラッシックパークのレベルを超えてからだ。そうでなければ(金はかかるだろうが)普通の映像テクニック以上のものではない。場合によっては違和感を感じさせることがある。ただモーフィングさせるだけでイメージが再現できるとは思わない。今回は特にそう思う。
メインのプロットが、着想が面白いだけに細かいところが残念になる。例えば、キーパーソンの一人となる教授の一人娘にしたって、もうちょっとストーリーに織り込んで、キーフレーズにリアリティを持たせることができると思う。
他にも、ストーリーの中盤までは「一週間後」とか「一カ月後」という幕間が多いが、シーンがそういう「強制時間」でブツ切りにされているから観ていてテンポが悪い。もっとスマートに表現できるはずだ。
また、日本人の役者だから、どうしても演技の細かい不自然さが気になってしょうがない。台詞がわかるから、細かな「いいかげんな設定」「見えない設定」に気づいてイライラする。まあ、このくらいにしておこう。最後に「人魚」の話に戻そう。「河童」もそうだったんだけど、それを「クリーチャー」として見せていく必然性、ストーリー上のリアリティがまったく感じられない。ハリウッドの特殊効果に慣れてしまうと、日本のクリーチャーは(それはすごい技術とか使っているんだろうけどいかんせん、規模の違いにはかなわず)情けないものに見えてしまう。それを防ぐためには、クリーチャーに徹底的にリアリティを持たせるか、「そのもの」を見せないかのどちらかだろう。有名どころではETが前者でエイリアンなんかは後者だ。「伝説」というファンタジーを元にしているのでこれらとは一慨に比べられないかもしれないが、「見せ方」さえ間違えなければ石井監督に対する評価は倍になると思う。次回作は「鬼」だという。せいぜい僕らの想像力を刺激するような映像を造って欲しいと思う。
正直、この映画は評価の割れるところだと思う。どこを観るか、なにを拾うかで大きく判断が分かれるだろう。僕はプロットを褒め、「見せ方」に首をかしげる。ひょっとしたら経験が足りないだけなのかもしれないね。
・・・・ところで。もしホモ・アクアレリウスに指がなかったら、あのペンダントはどうやって造ったんだろうなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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