Wing of courage(愛と勇気の翼)「こんな映画を観た...」のメニューへ戻る
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:クレイグ・シェーファー、トム・ハルス、ヴァル・キルマー他新宿タイムズスクエア、アイマックス・シアターにて。立体映像映画については“Today's Movic Talk”を読んでもらうことにして、ここではこの感想だけ。・・でも、なんで「愛と勇気の」なんだ?日本人って、普段愛だなんて口にしないくせに、よく言うよな。)
まあ、さすがビルの3階分をぶちぬいた劇場だけあって、アイマックスシステムの面目躍如、といったところか。観客に向かって挑みかかるように傾斜したスクリーンは、視界前方を完全に制圧する大きさで、確かに十分な迫力を提供するものだ。最初、スクリーンの巨大さを鼓舞するかのようなショート・ムービーが流れるが、コメディタッチでとてもおもしろい。システムのポイントをうまく使った俊作と言えるだろう。さて、本編の内容だが、史実に基づいた、第二次大戦前の飛行機乗りの物語だ。洋の東西を問わず、飛行機乗り、それもジェットエンジンを積んだ現代ハイテクのカタマリではなく、レシプロの、場合によっては複葉機の登場するその物語は、揮発性のケロシン(ジェット燃料)のニオイではなく、エンジンから漏れるオイルのむかつくようなニオイに彩られた男の物語であることがほとんどだ。(日本の場合、多くは戦時中の零戦がらみの物語であるのだが・・。「紅の豚」にしても、舞台は地中海だしなぁ。)それらは、西部劇のように雄々しく、そして友情と信頼、そしてなによりも愛につつまれた「ホットな」ストーリーである。そして、それは史実を基にしているとは言えこの映画も例外ではない。
この映画は非常に疲れる。パイロットはあっさりとアンデスの真ん中に落ちる。そこから延々と歩き続けるのだが、観客はその物語につき合わされる。巨大な山々と畳みかけるように襲う吹雪の映像は、アイマックス・システムによって十二分に伝わってくる。つまりそれは、最後のシーンの感動を増幅させるための手段だ。だがこの映画の場合、ノンフィクションであるがゆえにか「苦」を重視し、それをバネに「楽」が爆発するはずのラストシーンが淡々としてしまった点が残念だ。おかげで観客は、延々と続いた苦しみだけを記憶に劇場を去らなければならなくなる。ヘッドセットの重さもあり、どっと疲れた、という印象が最後に残ってしまった。これは物語の特徴でもあるが、もうちょっとなんとかなったのではないか、と思わざるを得ない。
システムが特異で並外れて巨大であるが故、「万博会場で見ているムービー」のような印象を受けることも確かだ。それは娯楽としての映画ではなく、「アイマックス・システム」を紹介するための映像作品、としての立場が先行ししまっている結果かもしれない。「システムにつかわれてしまっている」、失礼ながらそのような感じがする。(もっとも、このような特殊なシステムを運営し、あるいはそれを使って映画を撮るためには莫大な人的・経済的投資が必要なわけで、ちょっとした冒険さえも許されないのかもしれないが・・。)
そんなわけで、「アイマックス・シアター」には感服し、その映像の迫力には驚いたものの、映画そのものの印象はあまり残っていない。うーむ、まあ、しょうがないのかなぁ・・。
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