デビル
監督:アラン・パクラ
出演:ハリソン・フォード ブラッド・ピットもののはずみで観て来ました。
内容は・・最近(?)めずらしいIRAもの。いや、最近だからできるのかな。IRAの主流派が武装闘争終結宣言してから結構たちますもんね。(って、最近は競馬場爆破予告事件で疑われてますが・・。)で、ストーリー言ってしまえば、IRAの国際テロリスト(ブラピ)とアイルランド系・善良で正義感タップリのアメリカ人警察官(ハリソン・フォード)との物語。究極な所、「殺せるか、殺せないか」って話なんですけど、そのフレーバーが北アイルランドに関わる血なまぐさい話な訳です。(あ、もし北アイルランドやIRAについて詳しく分からなければ、MASRERキートン6巻でも読んで予習してください。)
ただまあ、そういう話が大西洋の反対側、ニューヨークが舞台で繰り広げられる、というのは、まあ、テーマとしては分からなくはないですけどね。アメリカには大勢のアイルランド系住民がいるわけだし、もちろんプロテスタント教徒も沢山いる。それでもまあ一応は平和にやっている。ところが大西洋を渡った反対側では、そういう彼らと同じルーツを持つ人々が戦っている・・。「対岸の火事ではない」という制作意図なんだろうけど、やっぱりピンとはきませんよね。まあ、これは僕が日本人で、さらに対岸の火事に見えるからなのかもしれないけど。(他の日本人、ごめんなさい(笑))
正直、こういうテーマは難しいと思う。イギリスやIRAがプロパガンダのために作ってるわけじゃないから、非常に難しいバランス感覚を要求される。(これはすべての戦争物に言えるかもしれないけど。)IRAのテロ活動を肯定することは絶対にできないが、その背後にある英国の仕打ち、抑圧された民族の流した血を忘れるわけにはいかない。かといって法律を犯すのを見過ごすわけにはいかない。もちろん犯罪者もテロリストも人間だが、時には撃たねばならないときもある、のか?などなど。今回、そういう矛盾・葛藤を一手に引き受けているのがハリソン・フォード演じる警官トムで、観る側も彼に感情移入することになると思う。そういう矛盾を自分の中で解決できぬまま迎えるエンディングに、警官トムは"You and I have no choice."(我々はこうなる運命だった)というセリフを吐くんだけど、まあ、脚本家もそうせざるを得なかったんだろうなぁ、と。そう言ってしまうと「なんだったんだよおい」って事にもなりかねないわけで、観客もすっきりしないのはあたりまえなんすよね。その上で、あえてこういう言い回しをしたって事には賛成するし、ある意味同情します(笑)。
ハリソンとブラピの間で演出上のトラブルがあったとかなかったとか。でもまあ、どっちがどんなこと言ったのか知らんけど、トラブル起こるよな、これ(笑)。どんなまとめ方したってうっぷんが溜まるよねー。発散できるところといえば、序盤の古典的銃撃戦シーンぐらいだけだし。ニューヨークの摩天楼にあっては、さしものテロリストもド派手なアクションかますわけにはいかんのかね(笑)。
でーもさ、やっぱり、This is not American(ここだとJapanese) story,it's Irish one.なんだよね。自分のところまで引きつけられない問題だよね。辛すぎて。
[EOF]「こんな映画を観た...」のメニューへ戻る
ホームページへ戻る