パブリック・アクセス
監督:ブライアン・シンガー

 最近ビデオにもなり、この連載の前の方で絶賛した(筈の)「ユージュアル・サスペクツ」の監督、ブライアン・シンガーの監督デビュー作。「ユージュアル〜」のパンフレットで大まかな内容を知ってから観たかったのだけれど、渋谷でリバイバルしてたので観てきました。

 で、ですね、内容は、とっても恐いっす。サイコサスペンス、までいかないけど、ちょっとサイコティックな、そしてルナティックな物語です。
 ストーリーは、田舎のちっちゃな街にやって来た男がCATVの時間を借り切り、「街の問題(wrong)」を電話で知らせるよう、住民を挑発することで始まる。電話が鳴り、女が話し出す。彼女の語る「街の問題」は、“近所に夫婦喧嘩の絶えない家庭がある”・・・・。

 「ユージュアル〜」でもそうだったんだけど、結局のところこの男が何者で、なんの目的でこんな番組をはじめたのかは観客である我々の推理に委ねられている。その手がかりはいろいろとあるのだが、「ユージュアル〜」を観ている身としては、それぞれがフェイクなのではないか、と疑ってキリがない(笑)。まあ、そうでなくても全体的に謎めいているのだけれど。「ユージュアル〜」でもブライアン・シンガーが見せていた、観客を挑発し、挑戦するという姿勢がこの作品にも如実にあらわれている(正確には「この作品“から”」だが)。

 で、まあ、デビュー作ということで作り込み自体はあまり大した事はない。死体の山が築き上げられていく展開には無茶があると思うし、ここまで事態は単純だとはおもわない。でも、「そうなるかもしれない」という部分はしっかり押さえてある。
 もっとも、このようなテーマは今に始まったこっちゃない。「1982」にしてもそうだし、大物では「バトルランナー」だってそうだ。しかし「パブリック・アクセス」は、それをSFの世界から現実の世界に引きずり下ろして我々に直面させた。スケールを大きくさせ、金をつぎ込めばバッチリ作り込むことができただろう。でもそれではSFと変わらない世界になってしまったのかもしれない。荒さの目立つ手法こそが、現実を映し出したのかもしれない。

 映画としては特A級ではないかもしれない。でも決してB級ではない。[EOF]

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