GHOST IN THE SHELL−攻殻機動隊−
(インターナショナルバージョン)
原作:士郎正宗
監督:押井守

 マイナー原作もののアニメ。全編英語ふき替え−日本語字幕なインターナショナル・バージョンがWOWOWでやってましたので、GETして観ました。
 大事なことを先に言うと、原作を知らない人にも観れなくはないですが、ちょっと分かり辛いところが多いかも知れません。テーマ的に深いところに突っ込んでいるよーな気がするので、そういう点では決して「ただのアニメ化」ではないように思います。

 原作そのものはヤンマガ連載だったんで、まあ日本全国知らない人の方が絶対多いという程度の知名度でしたが、圧倒的なディテールで描きこんであったり、ヘビィなテーマ性が見え隠れしたりでファンは多いようです。「ネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても、国家や民族がなくなるほど情報化されていない」近未来、という設定の原作ですが、脳は電脳に直結だわ全身サイボーグはいるわのサイバーな世界のお話になってます。でぇまあ、こちとら原作を知ってる訳で、原作知らないふりして感想を書くわけにはいかないんでご了承あれ。
 まず原作とのだいたいの違いですが、これはタイトルにあらわれていますね。原作は「攻殻機動隊」というマンガの中の、「GHOST〜」という副題の章(巻?)なんですが、劇場版ではこれが逆。「攻殻機動隊」というのは荒仕事を扱う公安の1セクション(公安9課、原作では首相直属の特殊部隊)の別名で、プロフェッショナルの集団ということになってます。原作の場合、隊員は人工知能付の思考戦車に乗り込み(このあたりが「攻殻」という名称のモト?)、縦横無尽に活躍する訳ですが、その活躍の合間に象徴的な出来事や伏線が入り込み、一つのストーリー「Ghost in the shell」を成り立たせている訳です。
 劇場版では、公安9課の活動はストーリーの本筋を描くのに必要条件として組み込んでいないような感じを受けます。つまり「Ghost in the shell」の部分、物質的ではない、「哲学的」な部分がバックボーンにあり、象徴やイメージカットを用いてそれを表現しているため、原作が(おそらく)大事にしていたであろうプロットのリアリティ(プロフェッショナル集団としての「攻殻機動隊」の活躍その他)を削ることになっているのでしょう。まあ、これは仕方がないことと割り切ってしまえばそれまでなんですが。(ナウシカにしたって原作とだいぶ違うもんなぁ。)
 マンガという描き絵とアニメという動画の表現方法の違いにも起因するのかも知れませんが、劇中に登場する全身サイボーグやロボットが実にロボットっぽく描かれているところが印象的です。マンガでは「限りなく人間らしいサイボーグ、ロボット」にみえた彼女らが「モノモノしく」描かれているあたり、ラストシーンのひねりなんかとあわせて象徴的です。ひょっとすると、その辺の象徴的な描き方、嫌な人には嫌かも。特に原作のファンには「んだよこれ、全然違うじゃんかよー」という人も多いでしょうね。まあ、士郎正宗ワールドというよりか、押井守ワールド全開なんで、そのへんは、しょうがないところですが。
 まあ、映像的には「熱光学迷彩」(透明人間マントみたいなの)の表現とか、気ィいれて造ってるな、という気がします。(まあ仮にも劇場版な訳で・・)CGのインサートも鼻に付くほどではないです。使い方としては適当。(そういう点ではパトレイバー2を思い出させますが・・)
 全体的な評価をというと、非常に難しい作品であると思います。アニメで、しかも(そもそもマニアックな)原作があっては評価も分かれると思います。が、あえて、この映画はオススメしたいと思います。

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