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冬の、朝の 野村尚志 八百藤の、道路にはみ出た、棚の台にみかんがのっている おばさんたちが、ダンボール箱から、ねぎや、 キャベツを、だしている ガラスごしの喫茶店の二階には聞こえないが 音がしている カートを、ころがす音、 ダンボールをあける音、 ピーマンの入ったビニール袋がこすれあう音、 そして、おばさんたちの話し声、 場所の、聞こえない、 音がしている それを見ている もうすぐ自分もここを出て しばらく歩き 音を聞き、自分もまた音をたてる 一日の、自分の場所に入っていく 朝、八百藤の、おばさんの手 軍手の白さ、白すぎることのない ちょうどよい その白さ エプロンの上にはおった カーディガン 冬の、八百藤の朝、しいたけも、