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 門       布 村 浩 一 耳鼻科の看護婦のフサエさんに 心の悩みを相談してふられてしまった 5月25日の新宿御苑の北側にある 新宿門午後一時 フサエさんはいくら待ってもあらわれない 一時間一本のタバコの禁を破って 一本を吸った 今日は曇っている 人は多い 今日は曇っている 人は多い 門をくぐらずに戻る 汗をかいている 服の下で少し汗をかく ポケットのなかののど飴を指がつかむ たったずっとあった一個 口の中にいれるとすっぱいビタミンCの味 まあ帰るか 今日は戻ろう 中央線のホームで 中央線のホームの下りに立って 電車が通りすぎた ぼくは 濃縮カリンエキスのフルーツ味の のど飴を買う




布村浩一さんの詩集   1995年 『ぼくのお城』 (昧爽社)   2002年 『大きな窓』(詩学社)