同人誌 Emmett より 詩編1
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カーニバル
松本真希
夢のなかであなたを殺したあと
血みどろの手で誰かに会いたかった
広場ではカーニバルが夜通しつづいて
縞縞の横断歩道を渡ってくと
たいこの音が
ちかづいてくる
泣きつかれてねむる子ども
野良犬の尻尾
アイスクリーム売り
空はピンクの層でできていて
太陽はなかなかあらわれない
ダムダム。
実在するあなた
夢の中のあなた
私の夢の中の
私のゲンジツの
すべりおちていく
どこにもいなかったあなた
ホントウハドコニモ
土埃
オレンジの皮
アラビアン・ナイフ
あなたは死んでしまった
かんぜんに
なんどもいろんな手口で
声ひとつたてないあなた
声ひとつたてないわたし
ただ荒くなっていく呼吸のように
豪雨のあとの急流のように
折れた枝枝をのみこんでなにかが流れていた
脳みそのひどく深いところで
わたしの両腕はあなたの血で染まっている体の一部のように
皮膚のように
小走りのサル
ハッサンの塔
ペプシコーラ
涙の跡がピンクに光る子どもの頬の
りんと輝いたその一瞬に
透きとおる
しずかに横たわる眠りのなかの
生を
古く罅割れたアスファルトに覆われてもなお砂のにおいのする街の
生を
物語とよぼうと現実と呼ぼうと夢と
名付けようと
かまわない
あなたの死んだからだの重さも一緒に
私はあるいている砂の
カーニバルの広場を砂の
まとわりついた二本の脚で砂の
においのする肩はピンクに
ひかっている
眠る子どものてのひらにそっと
キャンディーを落とす
リン。
なまぬるい皮膚を一枚
いくらで売ろう
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