今月へ

2005年 6月分



[ぐったり]

6月28日
 きょうは暑かった。歩いていると汗がどんどん出て、ゴムで止めた髪も濡れ
先からも汗の滴が落ちる。私は自分の体の具合が悪いのかと思った。でも夜に
テレビを見ると気温が36度もあったのだった。これでは汗が止まらなかった
はず。義母が風邪を引いてだるいと言っているので、体温をはかったか聞いて
みた。すると、検温してないというので、測ってみたほうがいいですよ、と
すすめた。普通のことなのだけど、義母は私は体温計で測らない主義だから
だいたい自分の調子でわかるから、と抵抗。こまった。なんとか、笑い話のよう
にしてそれじゃぁ○○さんの病院は行かない、っていうみたいになっちゃう、
などと取りなして、検温をしてもらった。なにしろ超高齢なので風邪は用心
しないと。測ってみると平熱なのでほっとする。それから欲しいもののメモ
をもらって買い物に走った。熱かったので喫茶店に寄って小島きみ子さんの
詩誌「エウメニデス」を読む。小島さん詩論の言葉は長野の自然の美しさ
が詩のように入っていたり、思考の飛躍がおもしろかったり、ふしぎな魅力
がある。今回は平林敏彦さんの「舟歌」についてだった。かすかなものを大切
に詩を書く、ということがあって共感できて嬉しかった。
私は今回ゲストで書かせてもらった。
「口のカタチ」。バイオリンの穴から音が出るのを、始め勘違いして、丸い口
と書いて原稿を渡して、fの形だと気付いて、あわててメールして直してもら
った。なぜ気付いたのかと言うと、元木みゆき写真展のオープニングで元木
さんの友達がバイオリンを演奏していて、それを見てはっ!と気付いたわけ。
バッハの美しい演奏が終わって、その共鳴の穴は何と言いますかと伺うと
f字口ですと教えてくれた。助かりました。


[手術?リフォーム]

6月26日
 ここにメスが入るような建物の壁の線が怖い。
再生されるとはいうけれど、リフォームは破壊する。建物とのこれまでの関係や
建物の中に刻まれた記憶を破壊する。赤い線は想像させる。
カットしたら壁が血を流して苦しむようでもあるとか、建物が使えなくなることで切れる
関係が、痛みとしてやってくるようだとか。なんとなく感じてしまう。


[蜘蛛の狩]

6月23日
 いつもの癖が出て、下を向いて歩いていら、通りのマンションの垣根の植木にぼんやりと
白い靄があった。数歩過ぎてから、もう一度見ると、蜘蛛の巣が張っていたのだった。細い
糸が気の遠くなるほど何往復も枝から枝へ張られていた。狩の網だ。小さな虫の殻になった
ものが一つだけ雨ざらしになっていた。貧しい獲物。これでは蜘蛛は空腹だろうと思った。
  


[まぶしい紫]

6月20日
 突然photoshopが壊れてしまった。5.5だったのだけれど、今度は
7.0が入った。いつも使えていたソフトが動かなくなると、まるで
自分の体のどこかが欠けてしまったように心もとない。こんなに依存
していたのだろうか。ソフトの機能のぶんだけ私のようなものが、拡張
しているような気がする。とはいっても、ほんの少しの機能しか使って
なくて、バージョンアップのし甲斐がないのだ。とにかくまた更新でき
るのでよかった。

 詩の合評会の会場が改装工事になるらしく、次回までしばらくあいて
しまう。今度は9月22日ころになりそうだ。夏はなし。夏休みという
ことで、しかたない。



[雫]

6月15日
 足元がぱっと明るいと思って目を落とすと、ツツジが雫をきらめかせていた。
もう梅雨になってしまった。

 先日、よしもとよしもとの漫画を映画化した「青い車」を見た。
どうにもならない時間を、やりすごすように生きる青年リチオの姿が切なかった。
子供の頃交通事故にあい、元の顔を失って、心にも傷を負っている。彼の悪夢は
痛ましくて、彼の身近な人達も彼を嘲笑う人達になってしまう。それでもなにごと
もないように、日々を送ってゆこうとして、躓きながら生きてゆく。苦しくて、
危うい日々。またリチオを巡って、不器用な恋をするあけみとあけみの妹のこのみ
が絡んで、また傷つくことが出来てゆく。生きてゆくなかで、さまざまなことを、
受け取りながら、人は傷つくしかすべかない、ということだろうか。
ただそんななかでも、青い車に乗っている時間だけはとても安らかで、リチオは
これからもなんとかやってゆける人のように思えた。
ときどき現れる曽我部恵一の音楽がその空気にあっていてとても良かった。

 


[水田は稲穂へ向かう]

6月8日
 高崎線で熊谷を過ぎたあたりでは、水田に水が張られていた。ここから始まるのだ
稲穂を目指して、と思う。つい先日、環七で稲穂の絵の袋を見た目に、送電線の渦の
ような背景の水田が、リアルで、私たちの食べ物は、これからどうなってしまうのだ
ろうと不安になっていった。

アーク・アトリウムB02で開催されている元木みゆき展「わ・る・つ」
とても面白いです。11土曜日までですので、表参道にこられる方はぜひ
寄ってみてください。飯沢耕太郎さんの企画展です。


空の青、プールの水中のブルーのなか、密室の黄色のなか、と三つゾーンが
ワルツのステップのように、ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリーと
展示空間を回転させる。
突き抜ける空の青を見上げながら、人のいる地平の人の営みを確かに見ながら
捉え切れない感じと、地上へ知らないうちに組み込まれることへの抵抗感が、
中心を欠いた画面の空の青から伝わってくるのだった。
青空の端っこにひっかかる作業している人のわずか左足だけとか、そういった映り込み
かたが、抵抗感を伝えてくる。そして空の写真は、地上で息をして暮らしている自分の
飛べ無さというものを引き受けていると思えた。というのは、空を望む感じの画面が
必ず下に地面を感じさせるものになっているからだ。でも重くなく明るさをもって。
そこから私はこんなメッセージを受け取った。飛べないかもしれない、でも踊ることは
できる。ワン・ツー・スリーと、関係を、回転させる。
生きる場面でさまざまなワン・ツー・スリーをくぐり抜け、踊る軌跡が日々になって
ゆくような、そういうまなざしが、やってきた。
これらは、もしかしたら、ただ生きていくことの視点なのではないか。
プールの中の人たちの関係は、ゆるやかに同じ浮力につながれ、ていくぶん親密に
見える。はしゃぐ体が、弾んで、暖かく、おだやかな関係にみえてくる。きつすぎない
たのしい距離をプールの水が繋いでいる。
それに対して密室は苦しい。苦しくて切ない。関係そのものが血にそまり、ひりひり
とたちあがってくる。密着して、こんなに距離をなくしても、肌と肌にへだてられて
いる。だだ生きていることはひっしなことでもあるとわかってしまう。私もあなたも
こうやって生まれてきているのだ。一つの女と男のカップルの関係から。
無関係のようにみえて、複雑な関係の地上へ、母の羊水から出てきてしまったのなら、
空気に摩擦音をたてても、皮膚から血を流しながら、踊ってゆくように、地上を滑って
ゆくのもいいかも知れない。
それは、縦に飛翔することではなく、水平に飛ぶことかもしれない。
ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリーと青い空の写真がリズムをもって並んでいる。
水平に飛んでいるみたいだ。ここを肯定しなければ、もう生きていけないところに、
私達はたたされているのだと思った。


 





[稲穂]

6月4日
 環七の交差点。チキンラーメンの袋と稲穂の絵のある袋がぺっちゃんこになっている。
運ばれてくるときには、この中に中味があったわけで、中味がなくなると身軽になるの
と同時に、どうでもよくなって、飛ばされて、こんなところへ吹き寄せられているる。



[雑誌が・・飲んでしまった]

6月1日
 バッグに飲みかけの清涼飲料水の小瓶を入れていたら、いつのまにか情報誌が
飲んでしまっていた。

 
 短編オムニバスのJam Filmsシリーズの「フィメール」を見る。
女性作家の原作を短編映画にしたもの
原作は姫野カオルコ、室井佑月、唯川恵、乃南アサ、小池真理子。
5作品のなかでは唯一、女性監督の西川美和の『女神のかかと』(乃南アサ)が良かった。
小学6年生の真吾がガールフレンドの美しい母親にときめく、というもの。けれど、母と
娘の性格がまったく違うことや、単身赴任で夫のいない空虚さを抱えた感じや、たまの夫
からの電話もすぐに元気な娘に取られてしまう苛立ちなども秘めている微妙なところを
描きだしているところが見せる。小6の真吾がうるさいガールフレンドにしかたなく
つき合わされている気持ちなどもうまく絡んで、母親との淡い共犯的な雰囲気なども
良く描かれていた。西川美和はつみきみほが主演した名作『蛇イチゴ』の監督。
今回もやっぱり面白かった。
 

・お知らせ『モーアシビ』誌、白鳥信也さんより

七月堂の内山さんが、
NHKの熱中サミットというスペシャル番組に
登場予定なので、そのお知らせです。

熱中サミット2005
6月2日(木)22時〜23時50分 BShi
6月5日(日)20時〜21時50分 BS2

6月19日(日)16時〜16時59分 総合

内山さんによれば、2日5日は、2時間なので登場するでしょうが
19日は時間が半分なので、カットされるかもしれない
と言っていました。
収録は5月に終わっているそうです。
よかったら、見てください。

なお、内山さんが協力した映画
兜王ビートルが夏休みに封切予定です。
映画のパンフレットに昆虫料理のレシピが3点
写真付で登場しています。
昆虫料理研究会でつくった料理写真も2点
カラーで紹介


★元木みゆきさんの写真の個展がある。楽しみ。

元木みゆき展『わ・る・つ』
飯沢耕太郎企画 東京写真月間呼応展
2005年6月6日(月)〜11日(土)
12:00〜19:00(日曜休館 最終日17:00)
オープニングパーティ:6月6日(月)17:00〜19:00
場所:表参道画廊 東京都渋谷区神宮前4‐1‐7‐3
アーク・アトリウムB02
http://www.omotesando-garo.com 
Tel:03-5775-2469