今月へ 2009/6月分 [白衣観音のまなざしは] 6月26日 これは高崎の白衣観音。中は9階まであって体内巡りができます。 村上賢司さんが映画を撮っていた観音様です。観音様のまなざしは 何に向けられているのでしょう。吸い込まれるような目もとではあります。 文月悠光さん『もーあしび』『おかえり』や写真の感想をありがとうございました。 「写真と詩の呼吸がとてもよく合っていることに驚かされました。」の言葉が うれしかったです。カモへの微笑みもありがとう! 島野律子さん。通路への再訪、そして実況、ありがとうございました。 「まなざしてる!」と言われて、私は気分が軽くなりました。 そこを通り郵便受けのコーナーにゆく人が、島野さんに軽く会釈して 島野さんの見るまなざしを大切に扱ってくれたのですね。殺伐したなか でほっとするお話です。 [新しい草の緑/五十嵐倫子さんの第二詩集『色トリドリの夜』] 7月25日 エノコロ草が光を受けて光っている。しなやかですっきりしていて 新しい草の緑。 五十嵐倫子さんの第二詩集『色トリドリの夜』は言葉を草にたとえれば そんな感じの一冊です。公園を歩く知らない少女とパパをみながら、 「ふたりはいいな」と優しいまなざしを送り「私はいまひとりで/時には 空と、木と花と、/ヘッドフォンから流れる音楽と/いつも一緒に歩いて いる」という現在がすっと詩のなかに登場し、「タイムカード」という詩や 「ファンデーション」という詩が続き会社で働いている日々に起こった出来事 から気持ちの中心へ入っていって、生身の声が聞こえてくるところがとても 胸を打つ詩集でした。ファンデーションが開けたとたんにこぼれ落ちてしまう詩など、 これまで読んだことがなかった。誰でも経験あることなのに。ファンデーション の破片を拾っては指でつぶすところなど、ああわかる、と思ってしまう。 「砕けてサラサラとこぼれ落ちる」その感触から繊細で複雑な陰りと諦めの安堵が つたわってきて、化粧室のあの世界がどっとあふれきて、涙ぐんでしまった。 この詩は使い捨てできないと言うところが焦点なのだけれど、詩のなかに出て くる共通感覚が、ぐっと入ってくるところが私はすごく好きだと思う。 少女漫画を読んだときにぴたっとくる感じに近いかも知れない。そういうところが この『色トリドリの夜』にはいくつもある。 それにこの詩集は生きている。「赤い実」という詩には 「いまはまだ叶わない 片思いの恋いのよう」な「夢」が実現にむけられている。 「夢」が今を離れずに詩化されていて、読んでいる私も希望の光をみて励まされて くるのです。この詩集は生きることと詩が化学反応を起こしている。きっと。 色トリドリの夜に星の輝きを灯して、将来それは星座になるのだと私は思います。 ずいぶん時が過ぎましたがインスタレーション『ただいま』展の冊子を いま制作中です。芦田みゆきさんが編集して校正を出してくれたので きょう見てきました。カラーです。私は相変わらず写真判で撮ったり調整しました。 インスタレーションのデザインはみずたさやこさんがしてくれました。 (ただいま‥芦田みゆき・川口晴美・北爪満喜・杉澤加奈子・みずたさやこ・森ミキエ) 東京ポエケットには詩誌『もーあしび』と『おかえり/ただいま』で参加します。 魚住陽子個人誌『花眼』にもゲストで写真入りエッセイを載せていただいた のでこちらも出したいと思ってます。 [敷島公園の松林] 6月21日 萩原朔太郎が散歩していた敷島公園の松林です。 ほんとうに久しぶりで訪れました。 詩のテラスでも書きましたが、高崎で開かれた詩画展へ 行ってきました。新井啓子さんが私の写真と新井さんの詩でコラボ してくれたのでした。きのうは高崎で群馬の詩人の方の朗読を 聞いたり、アイデアがいっぱいの展示を楽しみました。 とても自然に詩を書く人が暮らしているのが、朗読される 詩作品や声やトークから伝わってきました。詩やポエジーが 特別に敷居の高いことではなく気負わずにあるとこに感じ入り ました。人間にとって詩を書いたり、詩的オブジェをつくっ たりすることが普通にあるこの空気は他では接することが できません。きっと群馬ならではなのだと私は思ってます。 会場もNTT東日本のユーホールで、違和感なく、結界作ること なく市民に開かれていていい感じでした。群馬では 詩が地域社会に根付き開かれているのだと思います。 詩画展のテーマは「このさき 抜けられます」でした。 このウィットと明るさがあるテーマをみごとに詩にしていた 作品がありました。新井頴子さんの作品です。 んまで このさき ぬ けられます ねのはひ ふ けられます へほまみ む けられます めもやゆ よ けられます らりるれろ わん また金井裕美子さんの 「ジョレルさんの残したもの」という錆びた鉄の缶と 錆びた鉄の農機具の部分のようなものでできたオブジェ と詩もおもしろかったです。魔女が被るような三角の帽子の形の ものと、捨て置かれた鞄のような形の錆びた茶色の鉄が ジョレルさんがいて、どこかへ旅だったようでした。 [すっかり家に引きこもり] 6月14日 まだ工事の足場のなかにいます。留守にできない日々が続き すっかり家の近所に引きこもってます。近くの公園で紫陽花が 満開になっているところと、芝生が青々としているところが あるのですが、芝生の公園はすごく狭い公園で家に囲まれていて ここでのんびりせよ、というほうが無理。 なのですが、そんなことはおかまいなしに浜辺のようにシートを 敷いて日焼けサロン化させている男子がいるのです。本なんか 読んでまったり焼いているから、ぜったい近隣に住んでいるの ではないと思う。顔見知りがひとりもいないから、くつろげる のだと。非日常化させらるのだと思う。で、なぜ私はさっきから ぐだぐだ言っているのかと、入れないからなんです。狭いし、 奥に好きな花も咲いてるけれど、くつろぎの横、通れません。 そして、先日の晴れた日、公園の横を通りかかると、日焼け サロンの客が一人増えている! 友達呼んだらしい。寝ころびながら お菓子も食べていた。 いいなー、若いって。 [何か話しそう/本二冊] 6月7日 いまにも何か話しそうなシロ。 いつも知らない人が来ると家から逃げ出している。 改修工事の職人さんが来ると外へ逃げていって夜まで どこかへ行っている。だから返ってくると、つい甘え たくなるのたも知れない。外は野良猫がたくさんいて 甘くないから。前は鼻に引っかかれた傷をつけて帰って きた。クロとシロとで力を合わせて野良猫とやりあって いることもある。 小笠原鳥類さん、小島きみ子さん。 モーアシビ17号の感想をありがとうございました。 河津聖恵さんの新詩集『新鹿』思潮社。紀州へ行った記憶から親しく読みましたが もっと広く深く読み込みたい詩集です。 川口晴美さんと渡邊十絲子さんの共著『ことばを深呼吸』東京書籍。 ことば遊びのワークショップを通じて、詩をたのしく書いてみるところが 実況中継のようで、おもしろくそしてすごーくためになります。 ちゃんと紹介したいのでが、ここでは、 国語の先生の(強力な)助けになります、 詩を書いてみようという人には入門書としてもってこいです、 とお伝えしておきます。 読みながら私は固まったところがときほぐされました。 [蕗の葉] 6月2日 ひさしぶりに晴れて草がいきいきと緑を輝かせている。 空き地に蕗が繁りはじめ、緑の傘をひらいている。 フキは昔から道のそばに芽を出すのかも知れない。 くさかんむりに路で「蕗」。 実家の裏庭あたりに生えていた蕗は中空になっていて ストローのような茎でした。珍しかったようで大切にされて いたように思います。 おばあちゃんが蕗の汁で指の爪を黒くしながら皮を丁寧に剥き、 おいしく煮てくれたのを思いだしました。ずーと昔のことです。