2011.10
           今月へ

 [展示]

10月29日
 明日までなのですが、「もーあしび」の白鳥信也さんの展示
吉祥寺のギャラリー・ボンブラ。これはストリートからみられるウインドゥ
に展示してあるので夜中でもみられます。 昼なら中にも詩の展示があり
見られます。被災地支援にいっていて、毎日一個拾ったものを壜に入れて
ありました。東松島で拾ったのだと壜の蓋のメモでわかり、海と岩の
松島のうつくしいイメージとどろと壊れたものが山になっているイメージ
が同時にやってきました。詩は直ではなく「水」ということで構成されてい
ました。



 これは横浜トリエンナーレの横浜美術館前です。
列にならんでチケットを買って入りました。
さすがだと思ったのは、オノ・ヨーコ。コミュニケーション自体を作品化して
現在を掴みだしている。なかに電話ボックスの部屋があって、そこへ入って
オノ・ヨーコかから電話が掛かってきたら、受話器をとって、実際に話が
できるというもの。じぶんから電話を掛けることはできない。みていると
受話器をとって会話している青年がいた。あまり列に並んでいたので、
私はみるだけにしました。

写真の顔は12ヶ月あって自分の生まれ月の顔を見つけるのが楽しいです。

[詩「10 分のあいだだった」、詩と写真「ことばごえ」]

10月19日
 この二編の詩は、詩誌「サムシング」14号に寄稿する予定です。
ミクシィに載せたものを推敲しました。
 


     10 分のあいだだった        



午後6時30分
   
   空をみた
  水色へ薄い青を感じる夕暮れ
 交差点にでる
この街角には白とピンクの風船が
ゆれていた鈴なりだった尖った目に飛び込んできた

   信号を待ちながら 
  夕闇までにまだすこし間がある交差点で
 コンクリートの電信柱があたたかい
友だちと立っていてふとふれた腕のようにあたたかい
寄りかかる 
コンクリートの電柱は本心がない
いやなのに我慢するということはない
信号が変わるまでの数秒間 あたたかさに寄りかかる

   薄い青へわずかに藍色を感じるいま 
  白いビニール袋が
 走る車の間で舞い上がっていた旋回していた轢かれるように風にのっていた 
記憶から出てきたビニール袋の
交差点を渡る 
なまあたたかく湿気の多い夕暮れの肌に汗が滲む

   水色や青や藍色にうすく茜がはいるのを感じて
  裸足のまま女の子が泣きながらこの交差点を
 歩いていった あの昼のあの裸足が私を刺して痛い
広い道路を渡りきるあいだに痛みを引き取る詩の声がほしい 昼間聴いた 
詩を読む声を甦らす 「やかんもそらをとぶ」 

   茜色に染まりはじめた空に金色の雲の輪郭
  交差点を渡り終え 住宅街の道をゆくと
 「いってきまーす」 と
白いブラウスの女の子が玄関をあけて出ていった
歩きながら上向くとビルの壁に亀が張り付いていている
張り付いた亀にみえたのは甲羅のある亀ではなくて
漢字だった 「庫」

   路地に入ってしまうともう空の色がみえない
  薄暗い街 
 「ただいまー」と走って帰ってきた音が聞こえ 
えっ と聞き覚えのある声に後ろを振り返る
ついさっき いってきまーすと出ていったばかりの子だ
3分くらいしか経っていない

街灯の明かりでみると時計は
午後6時40分
2011年
9月
14日
10分のあいだだった 




    ことばごえ    
             


知らせること 知らせないこと
知ったらまずいこと 知らないとまずいこと
知ろうとする

知ろうと手をつくす
家族に聞く 知人に聞く 知っていそうな知人をさがして
問い合わせる

答える人の言葉を聞く 言葉の出され方を見る 
言葉の出てきかたを見る 
言葉の調子を見る 
ゆるんでいるか 本当にゆるんでいるか
ゆるく言っているのか 
張りつめたものを後ろに抱えてふつうに 言われているのか
答える人の言葉を聞く 言葉の出され方を見る 
言葉の出てきかたを見る

こちらから言ったことをこえて
言葉が出てきたとき
その言葉に あれっと立ち止まって
その あれっ
なんでその言葉が出てきて 言われたのだろう
と ひっかかりつづける ぼんやりとひっかかりつづける

少し時間をおいて 違う人と話ているとき
その言葉が出てきた 
ぱっと 背景に 焦点があたる
張りつめていることがある 
ゆるく言葉を出してきている後ろに
言った人も漠然とかもしれないが 張りつめている何かがある
いや 言った人はどうして張りつめているかを知っていて
でも曖昧なままを含んで 言葉を出すから
こちらから言ったことを ふと超えた言葉を
返してしまったのかも知れない
故意でなく ふと
ゆるく言っているだけではその人が足りなくて
ふと 背後を共有したくなって 
言葉を返してきたのかも知れない
受けたものは あれっと ひっかかる
ひっかかってほしいという 何らかのサインを受け取って
抱えきれなくて 
共有したくて 
知らせないはずのものが現れる 渡される 

知らせること 知らせないこと
知ったらまずいこと 知らないとまずいこと
知ろうとする
それでも 知ろうと手をつくして

答える人の言葉を聞く 言葉の出され方を見る 言葉の
出てきかたを見る
言葉の調子を見る 
ゆるんでいるか 本当にゆるんでいるか
ゆるく言っているのか 

あれっ
なんでその言葉が
ひっかかりつづける ぼんやりとひっかかりつづける

ひっかかってほしい







[10月10日ふたつの0は月みたいだ]





10月10日
日付の数字をみていて思った。
ふたつの0は月みたいだ。
家の近くで、こんな二つの月を見ました。

奈良時代から月にはウサギがいるとされていたのだとしりました。
奈良時代の刺繍を見て、確かめられました。
丸い月の刺繍のなかにウサギが刺繍されて、それは
うずくまっているウサギではなく後ろ足で立っている
ウサギでなんだか鳥獣戯画のウサギに似ていました。



[雲が通ってゆく]









10月7日

   雲が通ってゆく


長くのびる影の先に 待っているドアがある
つながりはみえない
ドアを開ければ 光が入るか
唇を噛む

信号機の下で見上げた月は半月
半分の影と 半分の月

夕陽の河原におりてゆくと枯れ草が繁って
すすきが風になびいている
足跡をつけに歩くのはなぜ

問いは 鳥が羽ばたいて
消してゆく

きのうときょうのつながり
みえない
河原の小石を踏む
足跡のことをアスファルトの上で思ったことがない

風に消えられない自分の影がのびる
地面にくっきりと
その影も
雲が通ってゆくと消えた 

雲が通ってゆく
くつがえる
映像をみた
パンダが肉を食べていた映像
笹、 笹は?
熊だからもともとは肉食だった
争いを嫌って避けて 笹を食べるようになった

きのうときょう
雲が通ってゆく

河原の小石をざくざく踏む