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まなざし



ビデオの中で雨が降っている
再生した画面のなかでガラスの表面を
雨粒が
ひとつぶひとつぶかさなって
ふくらみ すべり落ちてゆく

ひとをまっているうす暗い部屋の 
雨の水滴が
撮されて
みつめる
ガラスになってゆく

私はガラス
雨粒が 
私の表面でかさなってゆく
素通しの肌を 
すべってゆく
おもいだしたように耐えきれず
落ちる
ガラスの体をよくみると
体には鋼がはいっていて
黒い筋が幾本も
私の中を走っている

(すなおな素通しのカラダじゃないんだ)

ぴん と嘘を張りつめて この手に にぎりしめてきた

雨の
粒が
黒い筋に
からんで
伝い落ちてゆく

じっと嘘を張りつめてきた 割れるくらいなら 生きていたくて

キョウカ ガラスノ カラダ ナノダ

這われていよう 雨の粒に
   
強化硝子のカラダなのだ

あおむく
カメラに
空が入った
画面に空が映し出される
空には
窓の近くの
空には
電線の黒い線がたわんで人々の棲みかを
つないでいる





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