上野下アパートメントの名店

※2013年5月4日をもって上野下アパートメントでの営業を終えました
 上野下アパートメントには大通りに面して4つのお店があります。
 これはアパートが設計される時に店鋪付き住宅として、最初から計画されていたものなのです。
 なぜ同潤会はアパートメントにお店を計画したのでしょうか。それは、アパートは単なる住宅に留まらず、地域の生活に何らかの機能を果たすことが目的と考えたからです。
 集合住宅はややもすると地域から孤立しがちです。そのため、同潤会ではアパートを地域に溶け込む存在にするために、誰もが利用できる施設を作りました。それが例えば代官山アパートメントの銭湯であり、大塚女子アパートメントの店鋪付き住宅なのです。
 小さい規模でありながら上野下アパートメントも、同じ役目を担うことになりました。
 店鋪付き住宅というのは、日本の伝統的な様式です。大正・昭和初期の時代は外国人建築家がアパートメントを含む洋風住宅を設計することが多かったのですが、同潤会アパートメントはまさに日本人が日本人のために設計した住宅といえるでしょう。4軒のお店は74年たった今、ますます地域に根ざして営業を続けています。
 ここでは、その4つの店鋪を順に紹介していきたいと思います。中には隠れた名店も。
 さて、今回、訪れた名店は・・・



その2 ◆ 理容室パリー
※2013年5月4日をもって上野下アパートメントでの営業を終え、移転しています
 
理容室パリー

骨董的床屋(お母さま曰く)の外観



 ここは当初から理容室として設計された店鋪です。
 パリーは上野下アパート新築時に入居した前の経営者からこの店鋪を買い、昭和30年代から営業しています。
 お客さんのための椅子は2つ。お母様と2代目である息子さんが中心の家族的な雰囲気です。前経営者から数えると3代目ということですね。
 私の馴染みの美容師さんが病気療養中のため、ここで髪を切ってもらおうと決心した次第ですが・・・

 なかなかお店に入る勇気が出ず、店の前をうろうろ。決死の思いで(?)扉を開けました。
 突然やってきた見知らぬ人間に、最初はなんだか怪訝そう。
 「か、髪をカットして下さい!」
 の一言で、
 「どうぞ。こちらへ」
 いささか戸惑いがちに椅子の方へ案内していただきます。

 カットは息子さんが担当。とても丁寧でしなやかな手さばき。技術の確かさが伺えます。
 シャンプーは美容室と違い、顔を下に向けるのですね。お化粧していたら、ちょっと難しいかも。
 顔剃りはどうしますか?と聞かれ、せっかく理容室に来たのだから全部やってもらうことにしました。


床のタイル

あっちこっち改装して元の状態はほとんど残っていないそうですが、唯一オリジナルなのが床のタイル。70年を経てもびくともしない丈夫な作りと、当時の細やかな職人の技が光ります。

 さあ、お母さまの登場です。

 ・・・いやー、気持ちいいんですね〜♪ さすがプロの腕。自分でやるのとは別格です。つるつるお肌。
 気さくで朗らかなお母さま。なんか懐かしい言葉で話されていると思ったら、福島出身なのだそうです。私の自宅は茨城ですから言語的に近いのですよ。さすが北の玄関口、上野。東京のド真ん中にいるはずなのに、つい地元にいる感覚に陥ってしまった・・・

 お客さんがひっきりなしにやってきます。おばあさんから若い男性まで様々です。まさに地域に密着した「地元の床屋さん」。
 私も顔剃りのために通うことになりそう・・・も〜病みつき (^ ^;)



古いレジスタ
 
チーン。古いレジスターです。
さすがに現役は退いていますが、なんとも良い雰囲気を醸し出しています。


パリーバーバー
(東京都台東区東上野5-4-20)
Tel: 03-3841-3648
営業時間:7:30〜20:00

カット(シャンプー、顔剃り込み)
3,700円(税込)

撮影カメラとレンズ:
●PENTAX ME
SMC PENTAX FA43mm F1.9
●OLYMPUS CAMEDIA C-2
Olympus lens 5.5 mm F2.8


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