yamasaki_k vs the_great_sabaki

第1譜・13路盤初対決

1999年9月26日 於「yahoo初級ラウンジ」
 黒 yamasaki_k (5目半コミ出し)
 白 the_great_sabaki =自戦記

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第1譜 5手(通算1−5)

 yamasakiさんとは、実はこの時が13路では初対戦である。
 公式戦でもなし、「私が黒ですよ」としきりに謙遜するyamasakiさんだが、ここ数日の彼の対局を見て、自分が白を持つなどという不遜な考えは捨てねばならないと心から思っていた。手は、たぶん私の方が見えるだろう。知識もこちらの方がやや豊富だ。しかし、そんなものを「些細なこと」と思わせてしまう何かが、「長野オフ会」後のyamasakiさんにはあった。具体的には、石の流れとでも言おうか、全局を通しての着手の流れが、実に見事なのだ。はっきり、「強い」とわかった。9路で私が連勝していた頃のyamasakiさんとは違うと思った方がいい――そう確信した。同時に、「ぜひ打ってみたい」とも思った。燃えてきたのだ。
 したがって、そんな思いを込めて、あえて「ニギリ」にこだわった。握って、あらためて私の白番が決まった。
 yamasakiさんはタスキの星を占め、私は三々と小目。9路・13路では三々2つはよくない、というのが最近の私の感触である。



第2譜・趙治勲流

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├┼○┼┼┼┼┼┼10┼┼┤
├┼┼┼11┼┼●┼┼┤
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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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├┼┼●┼┼┼○┼┤
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第2譜 11手(通算6−16)

 白1コスミ(通算16手目。以下、通算手数略す)は、ぬるかったか。しかしパワーアップしたやまさん相手には、ぬるいくらい堅実な方がいい。黒ケイマに、左下拡大を阻んで3にカカれば、黒は4で圧迫と同時に上辺を勢力下にする。白5は、もっとも堅実な受け方。当然、後に逆襲を見ている。
 白7、黒8の交換後、白9は趣向。定石は7の下サガリだが、封鎖を嫌ったもの。
 黒が右上を10とシマった時に11の打ち込みが白5と連動した一打。白5とがっちり堅い地を固めて11の打ち込み。この呼吸は趙治勲流だ。白9と頭を出したのも、こうした展開を想定していることは言うまでもない…。



第3譜・両者誤まる

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼○┼31┼┼●┼┼┤
├┼┼A●┼●┼┼┤
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼B┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┤
├┼○┼┼┼┼┼○┼┼┼┤
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├┼┼●┼┼●┼●┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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第3譜 5手(通算17−21)

 黒1では、AノゾキからBトビ(あるいはその1路左)くらいを予想していた。1は予想外。攻めようとする石にツケる手で、通常は採らない。しかし、かえってこれで白が間違えた。2のツキアタリから4とキるごつい応手だが、これは得策ではなかった。白2では、1の右にオサエる方がよかった。黒がキってもヒイても、白がいいワカレになる。また、その方が前譜白9が働いてくるのである。
 すかさず黒5と、「二目の頭」をハネられ、白、苦吟に沈む。



第4譜・味悪

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼○○●●┼●┼┼┤
├┼┼●○○┼●┼┼┤
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼イ┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┤
├┼○┼┼┼┼┼○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┤
├┼●┼┼●┼●┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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第4譜 9手(通算21−29)

 黒1と「二目の頭」をハネられ、苦吟のすえに白が選んだのは、2から4のマクリツギ。これで黒の2子はきわどく取れている。黒が2の右にキって、白6の左に対し、黒3の下から強引に出ようとするのは、白イからシボられ、シチョウが成立する。しかし、そうであっても、このワカレは「白不十分」である。黒は上辺を地にした上に、取られた2子がさまざまな味を残して白を全局的に薄くしているのである。黒イのノゾキくらいでも、左辺に対して大きな手がかりとなる。
 白6。右辺への手がかりになるかどうか…。しかし、ここでも左上の味悪が足を引っ張っている。白は再び苦吟に沈む。



第5譜・勝負手

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼○○○●●●┼●┼┼┤
├┼┼●●○○●┼●┼┼┤
├┼○┼○┼┼○┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┤
├┼○┼┼┼┼┼○┼┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┤
├┼●●┼┼●┼●┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘
第5譜 1手(通算30)

 長考の末、私が選んだのは、白1の「勝負手」であった。「この1手にすべてを賭ける」とまでメッセージをつけての、気迫の1手である。局後、「普通にヨセていて白いいのではないか」(gassieさん)との指摘もあったが、左上から左辺にかけての借金もあり、尋常な打ち方ではどうしても自信が持てなかった。右上・左下の黒地も大きく見えた。単なるヤキモチかもしれないが、ここはいっぱいに頑張りたかった。ましてや、やまさん相手である。そうそう平易な打ち方で勝てるはずもないし、簡単に勝とうとも思わなかった。「全身全霊で打つ」――開始前にやまさんに送ったメッセージのとおりにするにはこの手しかない。勝っても負けても、悔いのない碁を打ちたかった。善悪は別にして、この1手はよく味わってほしい。



第6譜・やまさん逆襲

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├┼○○○●●●┼●┼┼┤
├┼┼●●○○●┼●┼┼┤
├┼○┼○┼┼○┼739
├┼┼┼┼┼┼┼11
├┼┼┼┼┼┼13
├┼○┼12┼┼┼○┼810
├┼┼┼┼┼┼┼┼○┼┼┤
├┼●●┼┼●┼●┼○┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘
第6譜 13手(通算31−43)

 黒1では2と立ち、丸どりを狙ってこられるのがいやだった。その時は9にコスんでワタリと6の右を見合いにするつもりだったが、それがよかったかどうかは疑問。黒1だったので、2にキリチガエてまぎれてきた。黒5では、8にノビるのではないだろうか。それでもシメツケは受けるが、実戦より地は得である。白は右辺をシメツけ、左辺12のトビにまわる。弱点を弱点でなくそうとしている。
 しかし、そこで黒13――。やまさん逆襲の一撃である。



第7譜・打ちまわしたか

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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤ ツグ(2の右)
├┼○○○●●●┼●┼┼┤
├┼┼●●○○●┼●┼┼┤
├┼○┼○┼┼○┼●●●┤
├┼┼┼┼┼┼○●┼┼●
├┼┼┼┼153○●●┤
├┼○┼○14○○┤
1913┼┼1120○┼┼┤
1716●●10●┼●┼○┼┤
18┼┼┼┼12┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼┼●○┼┼┤ ※「参考図」募集…どなたか
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘  強い人よろしく!! (^^ゞ
第7譜 20手(通算44−63)

 白1に黒2は突っ込み不足ではないか。この手はいつでも打てるので、まず黒3とノビる。これで白は困っていたのではないか。白はとりあえずオシてから下辺に手をつけていくしかないが、大した手があるとも思えない。黒すぐに2とツッコンだので、白は喜んで3からシボる。これは黒の逆ハマリである。続いて7の犠打からなりふり構わず先手で中央を止め、13のコスミにまわる。白、やや打ちまわしたようだ。
 しかし、14とひとつデられて、やはり中央が薄い。黒20にキリも入り、右下も薄い。
 依然として息が詰まりそうな形勢である――。



第8譜・敗れて悔いなし

┌┬┬201819┬┬┬┬┬┬┐
├┼┼141315┼┼┼┼┼┼┤ 28コウ取る(1の右)
├┼○○○●●●┼●┼┼┤ 30ツグ(25)
├┼┼●●○○●┼●┼┼┤
├┼○┼○22┼○21●●●┤
├┼┼┼┼┼┼○○●┼┼●
├┼┼┼┼○○●●●●●29
├┼○10○●16○○●○○11
○○○●○271251224
○●●●●17●┼●2326
┼┼┼●┼┼●○┼┼┤
├┼┼┼┼┼┼●○┼
└┴┴┴┴┴┴46┴┴┘
第8譜 30手(通算63−92)

 細かい。左上のハネツギ6目が手どまりで、そこにまわれば勝ちである。しかし、どうしてもそこにまわれないのだ。白は、ここへきてこれまでの薄さが一気に露呈している。黒1に、泣く泣く白2が省けない。そして、中央の薄さが足をひっぱり、白8もこれがないと気持ち悪くてしょうがない。結果的に手はなかったかもしれない。しかし、そこを読み切れないのは実力である。白8はやむを得ない。やまさんは、ずっと足りないと思っていたようだ。しかし、私は、白8を打つ段階で結果を読みきっていた。gassieさんはそれよりはるかに前からわかっていたようだが…。yamasakiさんには見えていない。しかし、私には見えている。見えていながらどうすることもできない…。これはつらかった。
 しかし、持てる力のすべてを出し切って、それこそ全身全霊をこめて打つことができた。yamasakiさんも、すばらしい打ち手だった。敗れて悔いなし、である。

92手完 黒1目半勝ち


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