hiromistars vs the_great_sabaki

第1譜・天敵

1999年9月30日 於「yahoo初級ラウンジ」
 黒 hiromistars (5目半コミ出し)
 白 the_great_sabaki =自戦記

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第1譜 9手(通算1−9)

 sabakiの“天敵”hiromistarsさんの登場である。なぜ“天敵”なのか。それをこの自戦記で解明していこうと思う。
 じつはこの後10月1日にも対局し、この碁はhiromistarsさん不出来で、通算してsabakiの4勝1敗となっている。しかし、内容的にはいずれの碁でも終始押しまくられており、全敗でもおかしくないものとなっている。
 碁を覚えて1年足らず…。まさに新興の打ち手であり、しょせん盛りを過ぎたsabakiはいずれ越えられる運命である。そしてその棋風は、ひたすら攻撃――。格闘技でたとえれば、K−1のマイク・ベルナルドばりのメガトン・パンチで相手をボコボコにし、あっという間にKOしてしまう、非常に痛快な棋風の持ち主である。sabakiも2回目の対戦で完膚なきまでに叩きのめされており、当然この碁でもパンチを警戒している。いや、警戒しすぎているきらいすらある。裏返せば、そのこと自体がすでに苦手意識の現われなのである。



第2譜・トービさん

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├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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●┼┼┼┼●┼┼┤
├┼●13┼○┼┼┼┼┼┤
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第2譜 9手(通算10−18)

 この碁は、なんとトービ(toubi)さんが観戦していた。終局後に、実に明快な検討をしていただいた。もしかしたら、このページを見て講評・参考図なども送ってもらえるのでは、などと虫のいい期待をしている。
 さて、toubiさんによると、実戦左下の黒の定石選択はよくないとのこと。私も、まず確実におさまった石ができて一安心、といったところである。とにかく完全におさまりきっていない石が1つでもある間は一切安心できない相手である。1つ1つおさまりをはかるしかない。
 白9。いつかはこういう手を打たないといけない。当然黒の猛攻は覚悟の上である。



第3譜・黒、腕力を誇示

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├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤   【参考図1】  【参考図2】
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├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤   ┼┼┼●┼┤  ┼┼┼●┼┤
├┼○●┼┼┼┼┼┼┼┼┤   ┼┼┼┼┼┤  ┼┼┼┼┼┤
├┼●┼┼┼┼┼┼○┼┤   ┼┼┼○┼┤  ┼┼┼○
├┼●┼┼●┼┼┼35┤   ┼┼┼┼┤  ┼┼24
├○○●●┼┼┼┼●┼┤   ┼┼●○┤  ┼●○
├┼●○○┼○┼┼┼┼┤   ┼┼┼┼┤  ┼┼
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤   ┼┼┼┼┼┤  ┼┼┼┼┤
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第3譜 7手(通算19−25)

 黒1。予想していた手である。19路で辺の星に石がある時、このハサミは甘いとされるが、こと13路では、けっこう有力なのである。三々入りした定石型でのハネダシの弱点がカバーされている。というか、この場合は黒2の側からオサエられても、石がいきたくない下辺に追いやられるのが気に入らない。で、白2とツケた。
 黒3は、とにかく三々(4)にオサエるものではないか。【参考図1】黒1である。白2には、黒3。陣笠にはツギにくい。大変重い石ができるからである。これはまさしくhiromiさんの餌食になるために存在するとしか言いようがない。白2で3は黒2。これは大同小異である。【参考図2】黒オサエに対し、定石型は白1だが、この場合は露骨に黒2以下外回りされて相手のペースにはまりそうだ。左方の黒が強いので、さらにここで手抜きされて上辺に先着されるおそれもある。そうなると何目負かされるかわからない。
 実戦黒3は一つの急所だが、三々が打てては有り難かった。これで三々入りして黒が4の左にオサエた定石形に戻る、と思いきや、なんと、黒は5に出て7と強引にオサエてきた。部分的には俗筋ながら、腕力を誇示した、非常に力強い打ち方である。この「俗筋の力強さ」に、白は完全にびびってしまう。



第4譜・逃げのピッチング

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├┼┼┼┼┼┼A┼┼┼┼┤
├┼○┼┼┼┼┼┼┤   【参考図1】
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├┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┤   ┼┼┼┼●┼┤
├┼○●┼┼┼┼┼┼┼┤   ┼┼┼┼┼┼┤
├┼●┼┼┼┼┼┼●○┼┤   ┼┼┼●○
├┼●┼┼●┼┼┼●●○┤   ┼┼┼●●○┤
├○○●●┼┼┼┼●○┼┤   ┼┼┼●○
├┼●○○┼○┼┼┼○┼┤   ○┼┼
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤   ┼┼┼イ┼┼┤
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第4譜 9手(通算26−34)

 白はすぐ右辺をツグべきである。しかし、打ったのは上辺白1ヒラキ。左上へのカタツキをきらったものである。ここで守っていては真ん中をすべて地にされそうだ。続いて黒は、5の下に切ってくるだろうと予想していた。【参考図1】黒1である。すぐにでも黒イで白死があるので黒先手である。私は白2と打つつもりだったが、これは逃げのピッチングである。さらに後の手として黒3の切り取りも残っており、トービさんによると20目近い手だという。ただでこんな大きい手を打たれた結果であり、白4で止まるからいい、その間に上辺にさらにもう1手打てるから悪くない、というのは完全に独善である。右上への進入の道が絶たれることを見落としている。
 それもこれも、hiromiさんの豪腕を恐れるあまりの「びびり」がそうさせたミスである。やはり攻撃力が強いというのはうらやましい。パンチが直接炸裂しなくても、「パンチがあるぞ」と相手に思わせるだけで、展開を有利に持っていくことができるのである。地では優勢ながら、心理的に追いつめられているのは白の方である。
 実戦では、黒2と、一歩遅れた。白1がきてからのカタツキでは小さい。白は慎重に3を決めてから5カケツギ。ほっと息をついた。黒6は白からの1子ひっぱりだしを防いで大きいと同時に、じっくりと構えを固めて一撃必殺の強打を狙っている。
 白7。またしても間違えた。5が打てて気が緩んだとしか言いようがない。白Aくらいが妥当である。いくらなんでもガメリ過ぎで、またしても黒にチャンスを与えた。プレッシャーが大きいがゆえに、一瞬の心理的な空白ができてしまった。



第5譜・黒の逸機

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├┼┼┼┼┼A┼46┼┤
├┼○┼┼○┼┼●○┼┤
├┼┼┼┼○●┼┼●○10
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├┼●┼┼┼┼┼┼┼●
├┼○●┼┼┼┼┼┼○┤
├┼●┼┼┼┼┼┼●○
├┼●┼┼●┼┼┼●●○┤
├○○●●┼┼┼┼●○┼┤
├┼●○○┼○┼┼┼○┼┤
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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第5譜 10手(通算35−44)

 白の三々入りは無謀で、黒に再びチャンス到来である。攻めたてられても安心させられても、結局ミスを誘う…。まったく手におえない相手である。初対決から現在までのこの子の異常なまでの成長力を見て、実は小学生なのではないかというかすかな疑惑を私は持っているのだがみなさんどうだろうか。もしそうだとしたら、夜ふかししちゃいけないんだぞ!
 黒3と打たれ、隅の白は右辺と連絡することはできない。白4、6のハネツギに、黒7が逸機だった。ここで黒Aと打ち、左右を見合いにする手があった。これは白参っている。黒7とカケツいだため、白は「隅のカギ型両スソマガリ」の活き形を得、安心した。基本の活き形であり、黒先でも死ぬことはないことは知っている。ただし、知識としてはだ。この相手の場合、もしかしたらこれでも死ぬかもしれない…(^_^;)



第6譜・再びトービさん

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├┼┼BA┼┼┼●○○┼┤
├┼○┼┼○┼●┼●○┼┤
├┼┼○●┼┼●○○┤
├┼┼┼┼●┼┼┼●○┤
├┼●┼┼┼┼┼┼┼●●┤
├┼○●┼┼┼┼┼┼●○┤
├┼●┼┼┼┼┼┼●○○┤
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├○○●●┼┼┼●○┼┤
●○○┼○┼┼○┼┤
├┼○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┤
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第6譜 8手(通算45−52)

 最後は大差となったが、トービさんによると、まだなお、黒Aという必殺の手があったらしい。これはぞっとした。何という恐ろしい人なんだろう…。じつはそれに対しては白B以下、2子を捨てて「勝ちました」とする手があって白勝ちは動かないらしいが、それはトービさんだから言えることであって、実際にAに打たれたら、そのように冷静でいられたかどうか。おそらく、耳まで真っ赤にして激しく動揺してしまうだろう。ホントに最後まで勝負はわからなかったのだ。
 さて、白の心理状態ばかり強調して黒の敗因をまったく書かなかったが、それはずばり、第4譜黒2(通算27手目)にある。トービさんの言を借りれば、「厚みを囲ったのが敗因」であり、自らの武器を封じることになる。カベは相手の石に向けていなければならず、それを囲ってくれるのはシノギ側としては歓迎なのである。
 hiromiちゃんは「地も大事にしたい」と棋風転換を志向しているようだが、それはやめた方がいいと思う。あくまで戦闘力に磨きをかけ、自らの長所を伸ばした方がいいだろう。この碁でもいかに黒の戦闘力に白がおびえていたかがわかるだろう。パンチがヒットしなくても、局面を有利に持っていくことは可能なのだ。それが戦闘力の真価というものだ。繰り返して強調するが、戦闘力なかんずく攻撃力が強いというのは、うらやましい限りの天分である。野球のピッチャーで言えば、並外れた剛球の持ち主ということである。当分の間は、ひたすらストレートの速さにこだわるべきである。カーブなど覚えるのは後からでいい。私は心から応援している(だからいじめないでほしいm(__)m)。

52手完 白中押し勝ち


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