2011.9
        今月へ


[秋の蝶]



9月25日
ハイビスカスの蜜を飲んでいたアゲハ蝶。近づいてもなかなか逃げない。
凄く弱っていて空腹だったのかもしれない。その羽根はボロッとしている。
充分生ききってほしい。

「もーあしび」24号。
私は詩と写真で参加してます。
すごくまっとうな詩誌だと思います。
それぞれがまっとうに詩を書くことに専念し、エッセイを書く。
楽しい読み物、シリアスなもの、詩的実験、それらが詩も日常
のなかにちゃんとある事を現している。
きょうは「もーあしび」と向き合って、変なブレから戻って
こられた気がします。

例えば、ポエム・ギャラリー・カフェ『中庭ノ空』を開店した五十嵐倫子さんは
どうしてこの店をひらくことになったのかを率直に書いてます。
どうして会社をやめて一念発起したのか、そして実現できたのか。

「もーあしび」24号出来上がりました(頒価500円)
読んでみようと思われたならぜひ
お気軽にご連絡ください。お送りします。


[「アンダルシアの犬」をみる猫]


9月20日
 jpgのファイルを整理していたら10年前の、まだ肥満ではないクロが
「アンダルシアの犬」をじっとみつめていた写真が出てきた。一瞬では
なくしばらく見ていたから、記念に撮ったのだった。クロはだいたい
テレビに鳥が映ると反応するのだけれど、コレは何が気になったのか。 

 きょうはお彼岸の入り。朝、老義母がどうぞお墓参りにゆけますように、
と仏壇に向かってとても大きな声で、なむみょうほうれんげきょーと何度も
唱えていてぎょっとした。道路が渋滞したけれどなんとか雨が降り始める
前に、墓参りをすることができた。都心を走り抜ける車から眺めると、ガラス
に覆われた高層ビルがあちこちに建っている。首都高が車の振動で
地震かと思うほど揺れる。あのガラスが地震で砕け落ちたら、と思うと恐怖
だ。高層ビルをガラスで覆うデザインがなぜ採用され続けるのだろう。
まだ咳も出るし、風の向きから放射性物質が関東に吹いてきているのでマ
スクをして外出した


[10分間のこと]






     10分間のこと


午後6時30分

  水色へ薄い青 を感じる夕暮れ
 この街角には白とピンクの風船がゆれていた鈴なりだった尖った目に飛び込んできた

交差点でコンクリートの電信柱があたたかい
友だちと立っていてふとふれた腕のようにあたたかい
寄りかかる コンクリートの電柱は本心がないいやなのに我慢するということはない
信号が変わるまでの数秒間 寄りかかる


  薄い青へわずかに藍色を感じるいま 
 白いビニール袋が走る車の間で舞い上がった旋回していた轢かれるように風にのった

交差点を渡る なまあたたかく湿気の多い夕暮れの肌に汗が滲む

  水色や青や藍色にうすく茜がはいるのを感じて
 裸足のまま女の子が泣きながらこの交差点を歩いていったあの昼のあの裸足が痛い
広い道路を渡りきるあいだに痛みを引き取る詩の声がほしい 薬缶も空を飛ぶ

  茜色に染まる空に金色の雲の輪郭
 交差点を渡り終え 
いってきまーす と白いブラウスの女の子が玄関をあけて出ていった
歩きながら上向くとビルの壁に亀が張り付いていている
張り付いた亀にみえたのは甲羅のある亀ではなくて漢字だった「庫」

路地に入ってしまうともう空の色がみえない
薄暗い街 

ただいまーと走って帰ってきた音が聞こえ えっと後ろを振り返る
ついさっき いってきまーすと出ていったばかりの子だ
3分くらいしか経っていない

街灯の明かりでみると時計は
午後6時40分




[かすかな 発光]





9月14日

詩のなかに 育った町の方言が書かれていた
言葉は目で読まれ どこか体内よりも深いところで発音されて
聞こえない声になってゆく 
それは私の声ではなく
聞き覚えのある声だった 
それは父の声だった
忘れていた方言から 聞こえない声を発して よみがえる父の感触

おとうさん
死の闇に飲まれて十年がすぎても
陽差しのように あの庭で 背筋をのばして歩いている父の
ふとした話し声が 光り けぶる
かすかな
産毛よりもかすかな 反射かもしれない 声
に
かき消されたのは 厚い時の壁だった





[2011.9.12 満月]





9月12日

玄関のドアを開けて見上げる月。きょうは十五夜の満月。

きょうヤリタミサコさんがパリから帰ってこられた。
サテリットの展示はどうだったのか不安でした。
憑かれたように今回の私の作品は電線の映り込んだ空ばかり
だったのです。特に電力のことを考えていたわけではなかった
のですが。でも、ヤリタさんのメールで、初日に私の「満月」
という言葉と写真の作品が売れたと知りました。

ヤリタさんのメールより。
「初日、一番最初に北爪さんの「満月」が売れました。それも
買ってくれたのは、ダリウス・ミョーというフランス現代音楽家として
有名な人がいてそのお孫さん。
ダリウス・ミョーの息子さんは、藤富先生と親しくしていたので
その関係で画廊に来てくださっていました。
でも高齢になられているので、お孫さんの方が来てくれたようですが
すぐに、一目ぼれ、「お買い上げ」だったそうです。」

藤富保男さん等が活動されたヴィジュアル・ポエジー展の歴史を思いました。
ヴィジュアル・ポエジー展に参加できて光栄です。



[ざわめき 浮遊 水しぶき ]









   
9月9日

まだ暑い日々。
先月行った水族館のさまざまな瞬間を思いだそう。

みつめていると、水中の浮遊は時間からすべりおちるよう。
魚ははやい。イルカははやい。
しんと静かな水の底には海月が光っている。

おおさわぎで歓声をあげる子どもたちの声はみえない水しぶきに
なって散り砕け、水族館のほの暗い通路に落ちてゆく。


【お知らせ】
9月10日からパリギャラリーサテリットで (日本語ギャラリー・サテリット)
第10回ヴィジュアル・ポエジィ・パリ展がはじまります。
9月10日から9月24日まで。
10日オープニングパーティー 
休館日 日曜日


【お知らせ】
共同通信のコラム「詩はいま」9月に、三宅節子詩集『砦にて』(思潮社)、
三井葉子詩集『灯色醗酵』(思潮社) 、福間健二詩集『青い家』(思潮社)
について書きました。地域の新聞でみかけましたらよろしくお願いします。