こけてぃっしゅ (1977.7.1)
「ハズレなし3アルバム」の最後を飾るLPである。歌唱力も安定しており、さらに前作に比べて余裕も加わっている。遊び心も持ちながら歌っている感がある。
1曲目はしみじみ「夏風通信」。バックの音のきれいさも追求している。2曲目、「レインボー・シティー・ライト」。「クスクスっ」が可愛かったなー。可愛い娘のクスクスは、本当に可愛いと実感する(なんのこっちゃ)。この曲を聴いて、シャガールを百科事典で一生懸命調べたことを思い出す。4曲目の「自然に愛して」、5曲目の「太陽写真」はとことん可愛さ追求である。どこが「こけてぃっしゅ」なんだ、という感じはあるが。B面はうってかわって大人の雰囲気を追求した曲が並ぶ。しかし、そのぶん今ひとつ盛り上がりに欠けるのがこのアルバムの唯一の難点になっている。
B面に収録のシングル曲2曲がやはり特筆すべきものであろう。「恋愛遊戯」は、実際に口ずさんでみると分かるのだが、非常に難易度の高い曲である。こんな曲をシングル曲にしてしまうあたり、よほどの自信がないとできないことである。遊び心も伴っていないとできない。一連のヒット曲路線の中でも、異彩を放っている。また、「九月の雨」は、名曲との声が多いと同時に、彼女の「力の歌唱」にピリオドを打たせた魔性の曲である。あまりに喉に負担の大きい高音部の絶叫が、疲労の極に達していた彼女の喉をむしばんだのだ。TV出演中に突然声が出なくなった彼女を見て、びっくりしたものである。ものすごく悲しかったことを覚えている。
このアルバムのジャケット類では、歌詞カードの写真が好きである。横顔を左右に並べ、見開きで正面からの写真が現れる仕掛けになっている。この顔がまた可愛らしいのである。この頃の太田裕美は、次のLPが出るのが楽しみでしょうがなかった。発売日が待ち遠しかったものである。そして、出て即日レコードショップに買いに走り、わくわくしながら聴くわけであるが、期待を裏切ることはなかった。最も、ファンだったら当然で、最後の方まで同じ期待感だったが。
なお、このアルバムから基本10曲(片面5曲)構成となっている(ただし、ときどき片面に+1あり)。