心が風邪をひいた日 (1975.11.1)
1曲目に「木綿のハンカチーフ」が入っているが、いわゆるアルバムバージョンで、世間に知られた曲とアレンジが若干違う。また、3番の歌詞も少し違っていることも有名な話である。個人的には、アルバムバージョンの方が素朴で好きである。どうもシングルバージョンは、完成度が高いぶん、「絶対に売ろう」「どうすれば売れるか」といった計算が感じられるのである。
このアルバムには、コンサートで必ずこれを歌わなければおさまらないといった感じの曲が目白押しである。ある意味、太田裕美の象徴のようなアルバムといえよう。私は、このアルバムを第1期太田裕美の完成と位置づける。つまり、モメハンのヒットで流行歌手になり、まったく別の歌手に変身(少なくとも、私はそう思っている)する前の、いわば「真・太田裕美」(ストリートファイターZERO2の「真・豪鬼」みたいな表現だが)の完成が、このアルバムの意義なのである。だからこそ、定番ソングが多くなっているのである。
「袋小路」「ひぐらし」「青春のしおり」「銀急」「七つの願いごと」…。これこそ清純派・太田裕美の集大成であろう。
しょーもない指摘を1点だけするならば、このアルバムは全12曲となっているが、実は実質11曲なのである。というのは、「THE MILKY WAY EXPRESS」は、「銀急」のごく1部・時間にしてわずか22秒分を取り出しただけなのである。初めて聴いた時はズッコケてしまった。これはちょっとないよなー…。まあしかしご愛敬ということで許してしまう。この人の人徳というか、ちょっととぼけたキャラクターのなせる技であろうか。
なお、このアルバムのジャケットあたりから、化粧が自然になり、にわかに若返ったように思える。CDしか持っていない人には悪いが、個人的にはLPの歌詞カードの写真が一番好きである。