Little Concert (1979.12.5)
文字どおり、「小さなコンサート」をイメージしたアルバム。
冒頭の『雨のつぶやき』は、『雨だれ』回帰である。イントロが『雨だれ』と同じであり、曲の調子もどことなく似ている。オールドファンには何ともたまらない出だしである。「『雨だれ』から○年、成長した裕美の姿を見てください」というメッセージを感じる。本来、彼女のコンサートは、常に、原点に帰るところから始まるべきなのかもしれない。「帰りたくなる、帰りたくなる」のところのかすれ声が胸を打つ曲である。
私のお気に入りの曲を挙げれば、『Simple Little Words』と『粉雪のエチュード』である。
『Simple Little Words』は、彼女の”ささやきの魅力”とでもいうべき魅力に満ちている。「Simple Little Words、Simple Little Words、ときどき、あなたを、見失う…」吹けば飛びそうな小さな声でこんな詞を歌われたら、Hiromistであればイチコロだろう。思わず顔がニヤけてしまう、困った曲である。
『粉雪のエチュード』は、私がこのアルバムを買ってきて初めて聴いたときに、「あっ、裕美の声が戻った」と思った曲である。寝転んで聴いていて、思わず起きあがったことを記憶している。彼女に言わせると、『ELEGANCE』が、「声が完治した最初のアルバム」(GJPベストアルバムCDのライナー・ノーツより)とのことだが、はっきり言って、「冗談だろう」と思う。何回も言うように、『9月の雨』を境に、特に高音部の発声が全然変わっていて、『ELEGANCE』でも、基本的にそれは戻っていない。『粉雪のエチュード』の、「美しく、粉雪舞い散る…」で、久しぶりにすきとおるような美しい高音を聴いたと思う。
『君がいなければ』『小さなキャンバス』−−もう名曲である。あえてコメントするまでもない。
『青春はアンコールのないコンサート』−−このアルバムが短く感じられる。「ええっ、もう終わっちゃうの!?」という気分になってくる。まさに「アンコールのないコンサート」を感じさせる演出、実に秀逸である。このアルバムを聴くときは、部屋の明かりを落として、入口に「立入禁止」の貼り紙をしっかりして、じっくり浸りながら聴きたい。はっきり言って戸外でウォークマンで聴くには不向きなアルバムである。